宇宙工学のエンジニアとして、最先端のものづくりに従事するKさんと妻。ふたりは、神奈川県から長野県小川村に移住し、毎日の暮らしに深くかかわる道具をつくりながら、自然とともに生きることを模索しています。自宅として建てたのは、緑豊かな里山の向こうに北アルプスを望む場所に古民家のような住まい。ゲストハウスとしても機能する、飲食店舗や工房が渾然一体となった、美しいご自宅を訪ねました。
すべての画像を見る(全23枚)ハーフビルドした自宅でものづくりの工房と宿を営む
Kさんの家 長野県 家族構成 夫40代 妻30代
設計/S/A 坂利春建築研究所
Kさんが移住してよかったこと
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1.思い描いていた、スローライフと事業を実現
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2.目の前に広がる北アルプスの大パノラマ
3.野菜からジビエまで、新鮮な食材を近所づき合いで
4.思う存分ものづくりに没頭できる環境
「暮らしに関わるものをつくりたくて、それに合った環境を日本じゅう探し回って出会ったのがここでした。北アルプスを眺めながら静かな環境でものづくりに向き合えることがいちばんうれしいですね」
移住の理由をそう話すのは、神奈川県川崎市から長野県小川村に移住したKさん夫婦。
広々した土間空間を使って夫がつくりだすのは、服や家具、器など日常使いのためのもの。宇宙工学のエンジニアとして最先端のものづくりに従事する夫にとって、身の回りの道具づくりは人間としてバランスを取るために大切なことなのだそう。
びっくりするのは、そこにずっと建っていた古民家のように見えるこの新居も、建具を含む内装など、ほとんどがKさん夫妻の手づくりだということ。
「設計は建築家の坂利春さんに依頼しました。ハーフビルドはたりない費用を補う意味もありますが、自分が暮らす家だから自分でつくりたかったんです」(夫)
土間はものづくりの空間であると同時に、作品を展示するためのスペースでもあります。夫婦はこの住まいを、「つくりながら暮らす」というスタイルを世界に発信するための拠点に。そのため、一組限定でゲストが宿泊できる客間も設けています。
「北アルプスを一望できる広間で、なにもしない時間を楽しんでほしいですね」(妻)。ものづくりの工房と宿、そして住居を古民家の形に昇華させた新しい移住のスタイルが、そこにはありました。