主婦業のかたわらエッセイストとしても活動する若松美穂さんが、楽しく、豊かに暮らすためのさまざまな工夫をつづります。 今回は、親に元気でいてもらう秘訣、親の役目を取らないという優しさについて。
すべての画像を見る(全3枚)食事や洗濯、76歳の母がすることに手を出しすぎないようにする理由
50代・母親と二人暮らしの友人は、朝に必ずお母様のつくった朝食を一緒に食べるのだそうです。自分が20代の頃、40代の女性が母親のつくったお弁当を持って会社に行く話を聞き、驚いたものです。
でも今、この年齢になってわかることがあります。それは単なる甘えではなく、親に元気でいてもらう秘訣、親の役目を取らないという優しさの場合もあるのだと。
庭に出ていたある日、挨拶を交わす程度ではありますが、顔見知りの年配女性がうれしそうに教えてくださいました。
「私、よくここを通るでしょう? なぜかというと…毎朝決まった時間に出かけてね、○○で新鮮な野菜を買うの。それで、娘の夕飯とお弁当を用意するのが毎日の仕事なのよ」
足を労わるように、ゆっくりと歩いて行かれます。
「あらっ! お嬢様、幸せですね」とお返事をしましたけれど、後ろ姿を観ながら、娘さんの気持ちを想像しました。母親には、健康のためにも(買い物という)歩く理由も必要。食事の用意をすれば、自分が仕事で留守の間、少しはバランスよく食べるだろう…と考えてのことかもしれません。