52歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した7歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽん子ちゃんという家族5人で暮らしています。 今回は、バッティングセンターにハマったうーちゃんのお話です。
「ぼく150kmのボール打てるかな?」うーちゃん、バッティングセンターへ行く
未来のドラえもんが野球をするマンガ『ドラベース』を読んでから、小1の養子のうーちゃんがすっかり野球好きになって、裏のあき地や神社で一緒に野球をしています。
去年のクリスマスプレゼントで、サンタさんからもらったグローブとボールのセットのボールはすっかり縫い目が破れてきました。グローブは、おもちゃ屋で買った安物のせいか、皮が硬くてうまく開かずボールに向けても落としてばかりです。バットはおばあちゃんにダイソーで買ってもらった200円のプラスチックの赤いバットです。
僕が下手投げで投げたボールを、ポコンポコンと打ち返します。最初はさっぱり当たらなかったのが何度もやっているうちにだんだん上手になってきました。
投げるのは、最初は前に投げているつもりが後ろに飛ぶなど信じられない投げ方でしたが、だんだん上手になってきました。
キャッチはグローブのせいもあるのですが、それだけではなく、飛んでくる球が怖いようで顔を背けてさっぱり捕れません。顔を背けるだけでなく、体ごとよけて転がるボールを追いかけて捕ります。そのためけっこうな運動量となり、それはそれでいいかなと思いました。
すべての画像を見る(全4枚)僕が一緒に遊んであげられない日は、おばあちゃんに球を投げさせて打つ遊びをしていましたが、ボールの投げすぎでおばあちゃんが腕を痛めてしまいました。
●150kmのボール、打てるかな?いざバッティングセンターへ
「バッティングセンターにいきたい」
どこで聞いたのかバッティングセンターの存在を知ったようです。しかしバッティングセンターのボールは、僕やおばあちゃんが投げる下手投げのヘロヘロのボールとはわけが違います。最低の速さでも80kmです。
「ぼくは150kmうてるかな」
何を寝ぼけたことを言っているのか、プロでも大変です。現実を知らないと想像はどこまでも飛躍するようです。
「パパはフォークボールなげられる?」
そんなことも言います。
「プロのピッチャーでも投げられる人と投げられない人がいるし、まっすぐ狙った場所に投げるのも難しいんだよ」
80kmのボールという現実に直面して怖がったり、なにもできなくて野球自体を嫌いになっても困ります。しかし、あんまり行きたがるものだから、車で10分くらいの距離にあるバッティングセンターに行ってみました。
●怖がりなうーちゃん、75kmのボールと対峙す!
すると、10年くらいぶりに訪れたバッティングセンターは、すっかり様変わりしていて最低速度が60kmからありました。以前大流行していた変化球はなくなっています。
たしか、以前は球が出てくる穴の横にモニターがあって、そこに野茂の姿が映し出されトルネード投法ですごいフォークボールを投げてきて、とんでもない落ち方をするので手も足も出ませんでした。
というかとんでもないフォークボールではなくても、変化球は全て全然バットに当てることができませんでした。
ひとつのケージの中で球速を4通りから選ぶことができます。60kmを選べるのは一番右端のバッターボックスが少し投手寄りになっている場所だけでした。どうやらそこが子ども用で、子ども用のバットが置いてあります。
僕が試しに60kmを打ってみました。とても打ちやすくて何発も当てることができました。
次に、うーちゃんが子ども用の金属バットを持ってバッターボックスに立ちました。すると、何球かポコンポコンと当てていました。まったく怖がることなくバットを振って何発も当てていて、びっくりしました。
大谷翔平選手の影響なのか子どもが何組も来ていて、順番待ちをしなくてはなりません。僕が大人用のゲージの中では一番遅い75kmを打っていると、うーちゃんも打ちたいと言います。しかし、子ども用のバットはありません。
「大人用だけどいいの?」
「いい」
やってみると、60kmほどではないものの何発か当てて、しかも全然怖がりません。あの怖がりのうーちゃんが、バッティングに限っては全然怖がらないのです。ただ、大人用のバットではやっぱりフォームがおかしくなりそうなので1回だけにしました。
その後順番待ちをして、60kmを何回か打ちました。僕とうーちゃんで、4ゲーム千円のカードを2枚使いました。
11時からのビンゴ大会に参加したらうーちゃんはお菓子の福袋を当てて、おまけに1ゲーム分のカードももらいました。
合計で9ゲーム分、そのうちおそらく5ゲームはうーちゃんがしていたはずです。それでもまだやりたいないと言います。順番待ちが大変なのでお昼になって帰りました。
●中古のバットに声を震わせて喜ぶうーちゃん。逆に申し訳ない
それからうーちゃんの口から「150kmを打つ」「フォークボールを投げる」という現実離れした言葉は聞かれなくなり、ちょっと鬱陶しかったのですが、寂しく思います。そして、中古で少年用の金属バットを買いました。これがあれば、大人用のケージで75kmを順番待ちせずに打つことができます。
「パパ、どうもありがとう~」
バットをうーちゃんに見せると、普段挨拶も返事もろくにしないのに、声を震わせて感謝の言葉を言いました。ケチって中古品を1100円で買ったのに、そんなに喜んでもらえるなんて逆に申し訳ない。
ただ、うーちゃんの野球ブームがいつまで続くかはまったく不明で、来月には無関心となっていても不思議ではありません。1年続いたら新品のバットを買ってあげたいと思います。