作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回は、野菜がおいしい今の季節、久美子さんがおすすめの食べ方を教えてくれました。
第43回「簡単でおいしい野菜の食べ方」
すべての画像を見る(全5枚)●冬から春にかけては野菜がおいしい
桜前線が全国を一気に駆け上がり、野菜からも一つまた一つと花が開いていく。筍が頭を出し、山菜が野を賑やかし、冬眠していた地球が一気に目を覚ます。嵐を巻き起こす激しさもあるけれど、活気に溢れた春は一年で一番好きな季節だ。
冬から春にかけては野菜もおいしい季節。ほろ苦い菜花がとりわけおいしいし、もうすぐ終わりだが、大根なんて一日で一本ぺろりと食べる日もある。
大根や白菜は大きくて一人暮らしだとなかなか減らないという声もよく聞く。確かに、魚の横につける大根おろしで使っていたらなかなか減らないし、おでんをするのもちょっと気合いがいるよねえ。ふろふき大根も大好きだけれど、春になるとそろそろ飽きますよねえ。
●大根を最高においしく食べる簡単な方法
もっと大根を気軽に食卓に登場させる方法、しかも全然飽きない食べ方がありますよ!
私のおすすめは、半日天日に干して焼くだけ!
皮もついたまま2センチずつ輪切りにして、かごに入れて朝ベランダに干しておく。時間があれば途中でひっくり返すし、なければそのまま夕方まで干しましょう。洗濯を入れるタイミングで大根もピックアップ。
オリーブオイルを軽く引いたフライパンに大根を並べて蓋をして中火~弱火で両面を蒸し焼きにし、最後に塩コショウをすれば大根グリルのできあがり。
あなどるなかれ。これ、本当にびっくりするくらいに美味しい。時間がないときは干さずにそのまま焼くこともあるけれど、干したものの方がやっぱりおいしい。この一手間で数段おいしくなるので、そこだけ頑張ってください。
これ本当に大根? と思うくらい旨味がぎゅぎゅーっと凝縮している。食べだしたら止まらなくなって、気づいたら一人で大根半分を食べてしまっている。それに、干すことで水分が蒸発しているからか、短時間で焼けるのも嬉しい。
数日中に食べるのであれば、数時間日光に当てるだけでいい。もっと長期に保存したい場合は細く切った大根を2月の寒風の中で数週間干すという、いわゆる「切り干し大根」も結構簡単に作ることができる。切り干し大根もとても便利な保存食で、味の凝縮具合もかなり濃厚だ。でも、やっぱり私は半日干しくらいが味的にも柔らかくて好きなんだよなあ。
特別な道具もいらないし、日光に当てることで、ビタミンDやカルシウム、鉄分などもアップし、栄養価が上がるのもすごいなあと思う。やっぱり太陽って私達生物に欠かせないものなのだ。
●野菜はオーブンで焼くだけでもとびきりおいしい
干す時間ないなあ、切ったり煮たりも大変だなあという日もある。そんな時は冷蔵庫にある野菜をまるごとオーブンに並べて焼くだけにする。キャベツや、里芋、カブ、ニンジン、大根、シイタケ、何でも天板に載せてしまおう。カブや、ニンジンは、葉っぱのまま、里芋は皮をむくのが面倒なので、よく洗ったら半分に切って皮つきのまま天板に並べる。
ポイントはオーブンに入れる前に野菜の表面にオリーブオイルをぬってから焼くこと。ハケでペタペタっと空気に触れている部分に油を塗る(スプーンでも大丈夫です)。
こうすることで、野菜の中の水分が蒸発しないので回りはパリッと中はジューシーで食感もみずみずしさも保てる。オイルをぬらないで焼いたら、里芋がパッサパサになっていたことがあったので、オイルは必須だ。
焼きすぎたかなというくらいまで焼いてしまって大丈夫。葉っぱはパリパリになるし、キャベツの中の方は蒸した感じ、芋はむっちりと、食感がそれぞれに違うのもこの焼き野菜のおもしろさだ。
味つけはごく簡単に、塩コショウだけで十分においしい。野菜のおいしさがガツンと出る食べ方だ。柚子胡椒や粒マスタードを薬味に加えるのもおすすめ。
たくさん野菜が食べたいな、でも準備が面倒だな…というときはこの方法がとっても便利だし、野菜そのもののおいしさも味わえて楽しいですよ。
何種類も食べるのは難しいなという時や、冷蔵庫にいろいろ余ってるなあというときにも、ワイルドで凝縮された野菜のおいしい食べ方、ぜひ試してみてくださいね。
【高橋久美子さん】
1982年、愛媛県生まれ。作家・作詞家。近著の旅エッセイ集『
旅を栖とす』(KADOKAWA)が発売中。そのほかの著書に、詩画集
「今夜 凶暴だから わたし」(ちいさいミシマ社)、絵本
『あしたが きらいな うさぎ』(マイクロマガジン社)。主な著書にエッセイ集
「いっぴき」(ちくま文庫)、など。翻訳絵本
「おかあさんはね」(マイクロマガジン社)で、ようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどアーティストへの歌詞提供も多数。公式HP:
んふふのふ