ネットニュースやSNSを通じて、痛ましい出来事や怒りがわく出来事が、いやおうなしに飛び込んでくる時代です。
関係ないはずなのに、イライラしたり、気持ちが沈んで疲れてしまうということはありませんか?
自分と無関係の話やニュースに振り回されてしまう…もしかしたら、繊細すぎる気質かもしれません
「自分以外に起きた出来事に対してどうしたら距離が取れるのか、悩んでいます」という読者の質問に、漫画家、エッセイストの瀧波ユカリさんが答えてくれました。
●自分と関係のないことでも心がざわついてしまいます
すべての画像を見る(全2枚)自分と無関係のことなのに、イライラして疲れてしまうことがよくあります。たとえばママ友から嫁姑問題やDVモラハラ夫のことを聞くと、「なんて人なの!?」と自分のことのようにイラついて、つらくなるのです。
ほかにも世の中の虐待や行方不明などのニュースに心が痛み、沈んだり体調が悪くなったり。数年前の話でも、思い出すと心がザワつくことがあります。自分以外に起きた出来事に対してどうしたら距離が取れるのか、悩んでいます(Sさん・千葉県・32歳)
●私たちは大変な時代に生きている
とてもよくわかります。私も同じタイプ。当事者の気持ちや痛みを想像してしまうんですよね。身の回りのことだけが心配事だった大昔ならともかく、今は超情報社会。知らない国の悲しい出来事まで、写真つきで飛び込んでくる。私たちはそんな、大変な時代に生きているのです。
そうそう、HSPという言葉はご存知ですか? 繊細すぎる気質のことで、約5人に1人がこの気質をもっているともいわれています。もしかしたら私たちもこれに当てはまるのかもしれませんね。最近はHSPについての本も出ていますので、一度チェックしてみるといいですよ。
自分が繊細すぎると自覚するのはいいことです。私もそれに気づいてから、いろいろ対処法を身につけて実践できるようになりました。私は心がザワザワモードになってしまったら、とにかく体を動かすことにしています。外を走ったり、ストレッチしたり、お風呂に入ったり、部屋を片づけたり。そうして脳をクールダウンさせるとだいぶ心が落ち着いて、問題と少し距離が取れるようになります。
●「同情しない。灯をともせ」
それでもつい考えてしまうなら、軽くセルフお説教タイムです。
「自分が暗くなってなんになる?」と冷静に自分に問いかけます。そして、その問題のためになにか自分にできることはあるかどうかを考えます。
作家の田口ランディさんの言葉をお借りすれば、「同情しない。灯をともせ」ということです。
「かわいそうだ、かわいそうだと思うんじゃない。暗いことが起きたら、あなたが灯をともしなさい」(『「ありがとう」がエンドレス』より)私はこの言葉が大好きです。うなだれて丸くなっていた背筋が真っすぐに伸びて、視界が広がります。
●世の中を少しでも明るくすることなら、なんでもいい
「灯をともす」って、なにかすごいことをしなきゃいけないわけじゃないですよ。世の中を少しでも明るくすることなら、なんでもいいのです。電車の中で泣いている赤ちゃんにほほ笑みかけること、友達を笑わせること、家族の前で笑顔でいること。もちろん、災害が起きたときに寄付をしたり、デモに参加したりして一緒に声をあげるのもOK。どれも立派な「灯をともす」です。
体を動かして、灯をともしましょう。それは自分のためでもあるし、未来のためでもあります。なぜなら、そんな親の姿を見て、子どもたちは生きる術を学ぶからです。いつかあなたのお子さんたちが胸を痛めたときに、世の無常に押しつぶされることなく、自然と「灯をともす」ことができるように。教育も兼ねて、やっていきましょう! 応援しています。
【瀧波ユカリさん】
1980年、北海道生まれ。漫画家、エッセイスト。アニメ化もされた『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社刊)でデビュー。著書に『
30と40のあいだ』(幻冬舎刊)『
ありがとうって言えたなら』(文藝春秋刊)など