汚れて散らかった部屋の片づけ、毎日のお弁当づくり…。できることならやりたくないけれど、そうもいかない「面倒くさい」物事ってたくさんありますよね。じつは、この「面倒くさい」という感情は、脳の仕組みをうまく利用することで克服できるんです! 今回は、その具体的な方法を脳科学の研究者、柿木隆介教授に教わりました。

その作業が得意な人、楽しんでいる人のマネをしてみる

その作業が得意な人、楽しんでいる人のマネをしてみる
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 人の脳には、ミラーニューロンという細胞があります。他者の脳内での活動を、自分の脳の中でもマネするための細胞です。人が他人の行動をマネたり、理解したり、共感できるのはこのシステムがあるため。つまり人間は、ミラーニューロンのおかげで他人のよいところを取り入れるのが得意なのです。

 面倒くさいと思う作業を楽しんでやっている人を観察し、時間の使い方や仕切りのうまさをマネしてみましょう。新しいことを始めるには「マネから入れ」というのはじつは科学的にも正しいこと。徐々にうまくいくようになると、快感のホルモンであるドーパミンが分泌され、「好き」という感覚になってきます。

ひとつの作業をいくつかの段階に分けてこなす 「分割法」をとる

ひとつの作業をいくつかの段階に分けてこなす「分割法」をとる

「あれもやらなきゃ」「これもやらなきゃ」と思うとストレスになり、ますます面倒くさく感じる原因に。ひとつの作業を段階に分けて次々と達成し、「ここまでは終わった」という達成感を積み重ねることをおすすめします。達成感を感じると、人の脳には脳内麻薬とよばれるエンドルフィンが分泌され、さらに多幸感をもたらします。

 ちなみに、このエンドルフィンは、ランナーが1人で走るときより、2人以上で走るときに多く分泌されることが最近の実験でわかってきました。つまり、ひとりで作業するより、だれかと共同で作業した方が達成感や多幸感を強く感じるのです。面倒くさいと感じることは、ひとりでがんばろうとせず、家族や友人と一緒にトライしてみましょう。

面倒な作業を終わらせた自分を自分でよくほめる

 人はほめられると、脳の「快感中枢」と呼ばれる部分などが活動することがわかってきました。この部分は、パチンコやカジノなどのギャンブルで大当たりをしたときにも活動する場所。つまり人はほめられるのが、ギャンブルで大当たりするのと同じくらいうれしい快感なんです。面倒な作業を終わらせた自分をほめれば、その作業に対しても、徐々に快感を覚えるようになります

●脳の仕組みを利用して、心をタフに!

 人間の脳や身体はじつによくできています。たいていのことには順応できますし、脳の仕組みを理解して適切にアプローチすれば、解決できる問題の方が多いのです。今回ご紹介した対策を取り入れれば、今年の春は、「面倒くさい」と思っていたことにも楽しんで取り組めるようになりますよ!

【柿木隆介さん】

自然科学研究機構生理学研究所教授。九州大学医学部卒業後、神経内科医を経て39歳より現職。脳科学の啓蒙に力を注ぐ。著書に「

どうでもいいことで悩まない技術

」(文響社刊)などがある