生きるうえでも大きくのしかかる住宅費。家を購入すべきか否か…究極の選択です。どちらもメリットデメリットはあるもので悩む人も多いのではないでしょうか?
ESSEonlineでも多く寄せられるこの住宅購入のお悩みに、ファイナンシャルプランナーの丸山晴美先生に答えていただきました。
38歳子育て夫婦「頭金がないのに家を買ってもOK?」
相談者は、Mさん(38歳・パート勤め)、同い年の夫と子ども(未就学児)の5人で賃貸マンション暮らしです。
【相談内容】
これまで夫の社宅に住んでいて家賃を補助してもらっていましたが、夫の転職により突然家賃が重くのしかかることに…。
現時点でほとんど貯金ができていないのですが、家を購入する計画が出ています。
住宅購入は頭金が貯まるまで待つべきでしょうか? それとも、すぐにでも購入してもいいものでしょうか?
【回答】
結論から申し上げますと、5人家族でお子さんの教育費や養育費がふくらみやすい時期に、頭金なしで無計画に住宅を購入するのは、家計破綻リスクが高まるだけです。とはいえ、家賃補助が出なくなる以上、何かしらの対応をする必要が出てきます。
●賃貸に住み続けるなら、手取り収入の3割までが鉄則
住居費は手取り収入の3割までが目安ですので、現状の手取り収入の3割の中で借りられる物件を探すことになります。仮に手取り月収が40万円なら、家賃は12万円が目安です。借りる場合は入居時にまとまったお金が必要となります。関東圏であれば、敷金1礼金1仲介手数料1.1、保証料0.5か月分程度、引っ越し費用諸々で70~100万円程度のお金が必要になります。
初期費用などを抑えたいのであれば、UR都市機構の賃貸住宅も一案です。敷金は2か月必要ですが、礼金、更新料、手数料、保証料が不要なため、初期費用等を抑えることができます。
ここで大切なのは、いつか家を購入する際の頭金などのまとまったお金を貯める仕組みをつくっていくことです。
●住宅を購入する場合に押さえておきたい注意点
お住まいのエリアによっては、5人家族が住める賃貸物件や、車を所有しており、駐車場つき物件を希望しているが、希望に沿うような賃貸物件が見つからない。その場合は無理のないローンを組んで購入という流れになると思います。
住宅ローンを組む際、ご夫婦共に38歳の場合、35年ローンを組むと完済年齢が73歳となるため、25年ローンかつ毎月の支払いが、手取り月収の3割以内、ボーナス払いなしが現実的でしょう。毎月の支払い目安ですが、2000万円を返済期間25年金利1%の元利均等返済で借りた場合、月々の支払いは約7.5万円、同条件で3000万円を借りた場合、月々約11万3000円となります。
購入時の注意点として、固定資産税や修繕費用等の費用が別途かかるため、その費用も準備する必要があります。
また、中古物件を購入した場合は築年数やメンテナンスの状況にもよりますが、物件価格だけではなく、リフォームやメンテナンス費用も別途計算に入れて、あらかじめその予算を積み立てて備える必要があります。
●賃貸か購入か、メリットとデメリットを押さえる
とはいえ、購入もメリットがあります。団体信用生命保険に加入することで、借入をしている人に万が一のことがあった場合、以後の住宅ローンの支払いはなくなり、そのまま住み続けることができることです。
賃貸は、自分のものにはなりませんが、長期の借り入れの必要もなく、家族構成によって住み替えしやすいメリットもあります。
賃貸、購入どちらも多くのメリットデメリットはありますし、人によっても重視するポイントはさまざま。住居費を上手に抑えることが世帯の貯蓄にも影響しますので、できるだけ住居費負担が少ない方を選ぶとよいのではないでしょうか。
他にも、住宅費を抑えながら賃貸に住みつつ、リタイア後などに一括で購入する方法もあります。
住居費、教育費など、どの出費を優先させて貯蓄をするのかをまずはご夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか。
●家計がピンチになったときこそ貯まるチャンス
現状としてMさんご家族の貯蓄ができていない家計状況は、今後のことも考えると早急に見直す必要があります。住宅だけではなく、これからかさむお子さん3人分の教育費、老後の資金など、まとまったお金が必要となるライフイベントは盛りだくさんです。
今回の転職で収入が増える、妻も正社員もしくはフルタイムのパートなどで世帯の収入を増やして、その分貯蓄にまわす。それに加えて家計を見直し、節約をして貯蓄するなど、できるだけ貯蓄を増やしていきましょう。
そこで住居選びにもつながってきますが、未就学児がいる場合は保育園の空きがあるエリア、小学校低学年のお子さんがいる場合は、公的な学童保育があるエリアをリサーチしておくことで、子育てにかかるコストを抑えながらも、働きながら子育てをする環境を整えることができます。
転職や、収入が減ったり、教育費がかかるなど、家計に変化が起きたり、ピンチになったときこそ、貯まる家計にするチャンスです。このチャンスを逃さず、家計と向き合って貯まる家計を目指しましょう。