――[ESSEトレンド調査隊! 売れてる理由はコレ★] 赤いボトルがとても印象的な「アスタリフト」シリーズ。今でこそアスタリフト=富士フイルムの化粧品と結びつきますが、発売当初はパッケージを見て「えっ? 富士フイルムが化粧品?」と、驚いた方も多いのではないでしょうか。

驚く女性
なぜ写真フィルム会社が化粧品を?(画像はイメージです)
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今回は写真フィルムの会社として設立された富士フイルムが、なぜ高いクオリティの美容アイテムを開発できるのかについて、株式会社 富士フイルム ヘルスケア ラボラトリー 商品開発・ブランド推進本部の化粧品グループ・楠田文さんとブランドマネージメントグループ・藤谷知世さんにお話を伺いました。

日本を代表するフィルムメーカーがベスコスを受賞!?

化粧品ラインナップ
アスタリフトの商品

ベストコスメで47冠を達成した「ジェリー アクアリスタ」など、これまで名だたる化粧品ランキングで上位入賞する実力派化粧品ブランド「アスタリフト」を開発した富士フイルム。2021年3月に発売した「ホワイト ジェリー アクアリスタ」も、@cosmeベストコスメアワード2021 上半期新作ベスト美容液 第2位にランクインしています。なぜ写真フィルムの会社として設立された富士フイルムが、高クオリティの美容アイテムを開発・販売できるのか気になりますよね。

●世界で4社しかなかったフィルムメーカーの独自技術と化粧品開発の意外な親和性

富士フイルムが創業したのは1934年。写真フィルムの国産化を目的に設立された同社は、カラーフィルムの世界需要が2000年にピークを迎えたことをきっかけに、化粧品・サプリ事業を新規事業として立ち上げたといいます。

フィルム

「“第2の創業”として事業転換に向けた改革がスタートしたのですが、会社が培ってきた技術の洗い出しをしたところ、化粧品開発に応用できることがわかりました。写真フィルムの製造はかなり高度で精密な技術が必要とされるため、フィルム需要が最大だったときですら、世界でたった4社しか存在しませんでした。そのくらい追随することが難しい技術なんです。だからこそ、その技術力を生かした化粧品が開発できれば、新しい付加価値のある高機能な化粧品が開発できるんじゃないかと考えました」(楠田さん)

 

実際に、フィルムの製造会社として磨いてきた数ある技術の中から4つの技術が、化粧品開発に応用できたといいます。

フィルムはコラーゲン

1つ目はコラーゲン

。写真フィルムの原料は半分くらいがコラーゲン。そのため、富士フイルムは創業当初から87年間コラーゲンを研究しています。良質なコラーゲンの開発やコラーゲンを劣化させない技術を高めるために、ずっと向き合ってきました」(楠田さん)

化粧品分野でコラーゲンが注目され始めたのは、ここ40~50年ほど。それよりずっと前からコラーゲンを研究してきたというから驚きです。

「それから

2つ目は、写真を紫外線から守るために長年研究してきた抗酸化技術。紫外線による写真の色あせを防ぐにはどうしたら良いか、紫外線とずっと戦ってきました。化粧品分野では紫外線から肌の老化を守るスキンケアや、紫外線から肌を守る日焼け止めの開発にもその知見が生かされています。3つ目は光解析コントロール技術

。写真は、光を捕え情報を記録するので、より美しく見せるために光を解析して制御する必要があります。この光に関する知見を活かして、シミやシワのある部分の肌内部を可視化してそのメカニズムを解析したり、肌が美しく見える光反射を解析してベースメイク商品の開発などに応用しています」(藤谷さん)

さらに、

4つ目の技術であるナノテクノロジー

は、富士フイルムの代表的ブランド『アスタリフト』にも大きな影響を与えたといいます。

●知って納得!化粧品が赤い理由

写真フィルムの感光層には、数多くの機能性成分の粒子が並べられているそう。「この微細な粒子を精緻に制御しなければ高画質な画像をつくることができないため、ナノテクノロジーは高品質なフィルムの製造にかかせません」と楠田さんは話します。

「化粧品分野も同様で、美容成分を小さくするほど、浸透性が向上し、成分の効果を肌の奥まで届けることができます。この技術を使ってまず挑戦したのが、『アスタリフト』に配合されている抗酸化成分・アスタキサンチンのナノ化です」(楠田さん)

アスタリフトのローション
赤色のモイストローション

「アスタキサンチンは肌を紫外線から守る高い抗酸化力を持つことが知られていたのですが、水に溶けにくいこともあり、それまで化粧品への配合が難しいとされていました。そのアスタキサンチンをナノサイズにまで小さくして安定配合することに成功。浸透性を高めて肌に最大限に届けるという新たな付加価値のある高機能エイジングケアを開発することができました。ちなみに、

モイストローションなどの液体が赤い理由は、アスタキサンチンが赤色だから

なんです」(楠田さん)

●配合が難しい美容成分のナノ化に成功!ベストコスメ賞受賞が転機に

2010年に発売された、ジェリー状の先行美容液『ジェリー アクアリスタ』は、アスタリフトブランドの知名度をさらにあげるきっかけとなった商品だといいます。

ジェリーアクアリスタ
先行美容液の「ジェリー アクアリスタ」

「ジェリー アクアリスタには、水にも油にも溶けにくく、化粧品に配合するのが難しい保湿成分のセラミドを、リッチに配合しています。セラミドのナノ化も非常に難しいのですが、これを成功させた技術によって、化粧品メーカーとして初めて発明賞(※)を受賞しました。ジェリー状なのは、セラミドをたっぷり配合するために必要な独自処方なんです」(楠田さん)

「『ジェリー アクアリスタ』は、アスタリフトブランドのなかでも一番人気の商品。リピート率が非常に高く、『1回使ったらやめられない』との声も。先行美容液なので、今のスキンケアに1ステップ足すだけで効果を実感できるのも、取り入れやすいとご好評頂いています」(藤谷さん)

●「絶対に失敗が許されない」事業から引き継がれるマインド

常に、満足度の高い商品を生み出し続けている富士フイルム。そこには、写真フィルムのメーカーだったからこそのこだわりがありました。

「もともと、

写真フィルムは人生の一瞬一瞬を記録する大切なものなので、品質の失敗は許されません。そのためには、高い品質基準をクリアすることが必須で、その中で培ってきた研究開発に対するマインドがあります。化粧品でも“本当に肌に浸透するのか”、“本当に安定した品質を保っているのか”を徹底的に追及

して、お客さまの元に届けようと開発しています」(藤谷さん)

フィルムの会社なのに…ではなく、フィルムの会社だからこそ、技術においても、想いにおいても、女性の肌を毎日輝かせる商品を開発できる富士フイルム。これからの商品展開も非常に楽しみです!

※(社)発明協会(会長:庄山悦彦)の平成26年度全国発明表彰において、「ヒト型セラミドを配合した保湿に優れる機能性化粧品」に関し、発明者4名が「発明賞」を受賞。