購入や相続などで中古住宅を取得したけど、使いこなせないくらい床面積がある。あるいは、子どもが独立して、住み続けた家に使わない部屋がチラホラ。これでは、掃除や家の手入れの手間だけが増えて、なんだかもったいない…。そんな場合は、減築リフォームを検討してみましょう。「減築」とは、既存の家をリフォームして床面積を減らすこと。建物をいわば小さくして、その分のスペースを、庭やテラスとして活用すれば、快適な暮らしができます。一級建築士の新井崇文さんが、減築リフォームについて解説。自身の手掛けたリフォーム事例を交えて、その可能性を紹介します。
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建物を“小さく”して、その分を庭や駐車スペースに2階を全部、あるいは一部撤去して減築。吹き抜けを新たにつくることも1階の使わない部屋を屋根つきテラスへと「減築」するウッドショックも影響、中古住宅の活用がますます重要に建物を“小さく”して、その分を庭や駐車スペースに
減築リフォームをすると、敷地を有効に活用できます。建物の範囲を縮小して建築面積を減らせば、外構部分の面積が増えます。こうして生まれたスペースを庭、菜園スペースや、駐車&駐輪スペースなどに活用できるのです。
この写真は改修前の様子。左側に伸びる平屋の部分を減築(撤去)することにしました。
この写真は改修後の様子。左側に伸びる平屋の部分を減築(撤去)してできた空地を菜園スペースとして活用しました。
菜園スペースの手前にある駐車スペースも余裕ができました。
2階を全部、あるいは一部撤去して減築。吹き抜けを新たにつくることも
不要な2階部分を撤去する。これも減築リフォームで行われる手法です。既存住宅の2階部分がすべて不要だという場合は丸ごと撤去して平屋に改修できます。また、2階部分の一部が不要だという場合、外形はそのままキープしながら、内部の2階床だけ一部撤去して吹き抜け空間がつくれます。
この写真は改修前の様子。2階床の一部を撤去することにしました。
この写真は改修後の様子。2階床の一部を撤去して吹き抜け空間とすることで、下の階に自然光が降り注ぐようになりました。
この部屋はもともと北側で薄暗かった部分。吹き抜けによって自然光が降り注ぐようになり、明るいリビング空間に生まれ変わりました。
薪ストーブとソファが置かれ、スピーカーから音楽が流れる、心地よい吹き抜けリビングです。
1階の使わない部屋を屋根つきテラスへと「減築」する
1階で余剰な部屋があれば、外壁を撤去して屋根つきテラスにして、外部空間として活用する手もあります。イスを置いてくつろいだり、食事やバーベキューをしたり、雨に濡れない物干しスペースとして使ったり。外部空間ならではのラフな使い方ができるので、レクリエーションにも家事にも重宝するでしょう。
※外部空間にはなりますが、床面積が減るわけではないので、厳密にいうと減築の定義には該当しません。減築リフォーム、減築リノベーションに際してのアイデアのひとつとしてご紹介しています
この写真は改修前の様子。庭に面した和室を屋根付きテラス(外部空間)に改修することにしました。
改修後の様子。外壁2面を撤去し、屋根つきのデッキテラスとして整備しました。オーナー夫妻は、友人や知人を招いて頻繁にパーティをするご家族。雨でもバーベキューができるテラスとして重宝しています。
この写真は改修前の様子。左側の壁は耐震壁のため、外壁を撤去する際、この耐震要素は残す必要がありました。
改修後の様子。両脇の柱だけ残して耐震壁を撤去。透けたブレース(斜材)を設置することで耐震要素を確保しつつ、屋根つきデッキテラスとしての開放感を実現しました。
ウッドショックも影響、中古住宅の活用がますます重要に
ウッドショックによる木材価格の高騰から、新築住宅を実現するハードルは高くなってきています。一方、世の中には多くのあき家がありますので、中古住宅を入手してリフォームを行い、新築よりも費用を抑えつつ自分好みの住まいを実現するのも有効な手法です。
中古住宅を取得したが必要以上に床面積がある…。そんな時は減築の手法を採り入れてみるのも手です。新築住宅では思いつかないような特色ある空間ができる可能性もあります。信頼できる建築士に相談しながら、既存建物のもつポテンシャルを生かした魅力的なリフォームを考えてみてはいかがでしょうか。