東京には、オアシスのような花屋がたくさんあります。なぜ仕事として花屋を選んだのか、日々どんな思いで草花や客と向き合っているのか。都内でも注目の花屋を作家・エッセイストの大平一枝さんがたずね歩きます。写真中央の赤い水草は、パンタナルレッドピンネイト(流通名)。大平さんが訪れたショップの店長・藤森佑さんのお気に入りです。水草は学名で呼ぶことも多いので長いものが多いそう。「きれいに育てるのが難しい品種。それだけにうまく育ったときはうれしいし、美しさは格別です」。
すべての画像を見る(全9枚)水草は白い容器1ポット単位で購入可能。トリミングは専用ピンセットとハサミを水中で使います。水草の多くが陽性なので、ライトは観賞用だけでなく育成のためにも必要に。
自然の景色を水槽で表現。奥深き水草の世界が静かなブームに
「アクアの世界との付き合いは、友達の家で熱帯魚の水槽を見た小5から」と語る店長の藤森佑さん。仕事にするほど彼を夢中にさせたアクアリウムとは、水槽で水生生物や植物を飼育・育成する設備全体のことを指す。バブル時代の熱帯魚の水槽のように、派手なアクアリウムブームもあったが、現在は"ネイチャーアクアリウム"というスタイルが注目され、世界大会もある。
「かつてはダッチアクアリウムというオランダ発祥の水中園芸が主流でした。1990年代以降自然の中の風景と生態系を水槽の中で表現する自然派が人気です」
提唱したのは日本のメーカー・ADA(アクアデザインアマノ)である。自然の生態系を取り入れるには、とりわけ水草が重要で、水槽内のレイアウトの仕方で、工夫や個性、水草を育てる技術の差が出る。「メダカにはホテイソウ、金魚にはキンギョソウ。生き物に合った水草があり、生態と鑑賞、両方の役割があります」。魚を飼うにはろ過器、ライト、ヒーター、コンディショナー等が必要で2、3万円ぐらいから揃うそう。
「この設備があれば金魚でもメダカでも長生きして水換えもラク。環境がないとお祭りの金魚1匹でも実は難しいのです」
水草は1束数百円から。意外に敷居は高くない。店は、テーラーだった店舗を初代店主がDIY。水槽が並ぶ木製棚や板壁に心なごむ。まるで小さな森のような、たくさん深呼吸をしたくなる店であった。
手のひらサイズから水槽で楽しむものまで。深淵なるアクアリウムの世界
グラス型の水槽の底面は手のひらサイズ。ミスト式というレイアウト法で、水草を水を張らない水槽内で植栽、育成し、あとから注水する。水換えは流しで注水してあふれさせればOK。
店先に流木や石などアクアリウムのディスプレイ素材が並ぶ。店内はADA商品の品揃えも豊富。
中央のマツモは日本生まれ。右のロタラの産地は東南アジア。
需要の高いキンギョソウは、販売・持ち運びしやすいよう小分けに。金魚のエサになり定期購入が多い。
侘び草のひとつ、ニューラージパールグラス。通常の水草は砂利などに植えつけるが、侘び草は置くだけで育つ。
熱帯魚直販店、アクア業界メーカーを経て現職の藤森さん。アクアリム歴は30年!
【水景工房】
東京都世田谷区奥沢2-7-10(奥沢店) 電話番号 03・3725・5021 営業時間 13:00~21:00(日・祝11:00~20:00)、水曜定休
※情報は「リライフプラスvol.41」掲載時のものです。写真に映るプレートに表記された価格は取材時のもので、価格は変動します
写真/佐々木孝憲 取材・文/大平一枝