希望した広さよりもコンパクトな住まいづくりとなるのは、よくあること。そこでプランの見せどころ。工夫次第で実際のスペース以上の広がりを感じることはできます。今回紹介するお宅は、LDKと一体になった和室が夜は寝室となり、スペースの効率化を図ったプラン。LDKの収納がベンチを兼ねるなど、狭さを克服するための様々なアイデアが盛り込まれています。
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LDKと一体の和室は、夜はカーテンで仕切って寝室にキッチンは上部を開放して広がりを演出空間に奥行を生む、キッチンから玄関まで続くカウンター収納細かいパーツにもこだわった水回り間取り(リノベーション前後)LDKと一体の和室は、夜はカーテンで仕切って寝室に
このお宅の住まい手は西川さん夫妻。60~70㎡の広さを希望しながら、実際に購入したのは58㎡の中古マンションでした。工務店に勤める友人の紹介で、建築家の安江怜史さんにリノベの設計を依頼することに。無垢材を使った家づくりや造作家具のセンスが好みに合い、依頼を決めたといいます。
限られた面積で広々と暮らせるように、LDKと隣の個室の壁を取り払って小上がりの和室を設けました。部屋を広く使うためにソファは置いていませんが、小上がりがベンチの役割も果たしてくれます。
和室は、夜は寝室として使っています。リネンのカーテンでLDKとの間を間仕切り。羊とハスの絵は、友人のアーティストに描いてもらったものです。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫30歳 妻32歳
▼リノベを選んだ理由
築浅マンションを探していたが条件が折り合わず、築古マンションも視野に入れるように。予算内で気になる物件を見つけ、工務店勤務の友人に相談したところリノベ工事を引き受けてくれることになり、建築家の安江怜史さんを紹介してもらった。
▼住宅の面積やコスト
専有面積/57.79㎡ 物件価格/950万円 工事費/750万円(税・設計料込み)
キッチンは上部を開放して広がりを演出
吊り戸棚や垂れ壁を撤去して圧迫感をなくし、視界の広がりを確保したキッチン。リビングダイニングとの一体感も高まりました。
リビングダイニングの壁際に作り付けたテレビボードは、収納力を高めると同時にベンチとして機能する高さに設計。コンパクトな円形のダイニングテーブルは、伸長式になっていて、大勢での集まりにも対応できます。
空間に奥行を生む、キッチンから玄関まで続くカウンター収納
キッチン背面側に造り付けたカウンター収納は、廊下を経由して玄関まで続いています。収納力を確保しながら空間の奥行も演出。カウンター収納は、奥行が浅く高さも抑えているため、圧迫感がありません。
玄関の下駄箱も圧迫感のない薄型に。天井までの高さをフルに活用して収納量を確保しました。
玄関ホールは、すぐ横にあった個室を撤去して多用途に使える広々空間に。必要になれば個室に戻すこともできるようにしました。左手のカーテンは和室と同じアーティストに描いてもらったもので、クローゼットの扉代わりに。開閉に場所をとらず、開けたままにもしやすいのがメリットです。
細かいパーツにもこだわった水回り
トイレは便器を交換。スペースの幅を少し広げて、掃除道具などがしまえるカウンター収納を新設しました。使い勝手を考えて引き戸は1枚のみに。
京都の金工造形師にオリジナルでつくってもらった真鍮のペーパーホルダー。こだわりの品です。
トイレの引き戸の鍵はカンヌキ型に。他の金物との統一感を持たせるため、真鍮の製品を採用しました。
ワイドで深さもある実験用シンクを使ったオリジナルの洗面台。収納つきの三面鏡は下端にさりげなくオーク材をあしらってアクセントを利かせました。タオル掛けはトイレの金物と同じ作家による真鍮製。
壁や天井はDIYでドイツの本漆喰で仕上げたり、床や造作家具はオーク材で統一するなど、素材にもこだわった西川邸。視界をさえぎるものをなくし、造作家具にも広さを損ねない工夫をこらして、広々と感じられる住まいに大変身しました。「部屋の間に扉がないので、行き来がしやすいし、掃除もラクですね」と、暮らしやすさを実感している西川さん夫妻です。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計/安江怜史建築設計事務所
代表の安江怜史さんが2014年に設立。岐阜・愛知を中心に滋賀・京都・兵庫でも住宅の設計を手掛ける。無垢の木材のほか石・タイル・塗り壁といった素材感のあるものをバランスよく取り入れた、シンプルで飽きのこない空間デザインがモットー。住まい手に寄り添った家づくりに定評がある
撮影/山田耕司 ※情報は「リライフプラスvol.26」取材時のものです