約43㎡というコンパクトなマンションのリノベーション事例です。「カフェのような空間」を予算内で実現するために、LDKと廊下、玄関、トイレの床はインダストリアル感のあるモールテックスで仕上げています。クールな内装にナチュラルな家具や建具を合わせているのが、こちらの住まいの特徴。オーナーである鈴木さん一家が、快適に暮らすための工夫もふんだんに。コンパクトなのに家族の居場所がそこかしこにあるのも、そのひとつです。
すべての画像を見る(全15枚)実現したかったのは、モルタル床のカフェのような空間
最初の見積もりは、予算の倍近くという結果。そこで、リノベーションを手掛けた空間社・宮本泰則さんは「全体の質を少しずつ落とすより、施工範囲を絞ってコストダウン」することを提案することに。鈴木さんはこれを受け入れ、浴室と洗面室のリノベを省略。
造作収納などをつくらなかったこともコストダウンに貢献。「こうしたい」というイメージがブレることなく、工事費を最初の見積もりの半分ほどの金額におさめ、理想の空間をつくりあげました。
和室があった部分をリビングとしたことで、開放的でくつろげるLDKが誕生しました。床はモルタルのような味わいがあり、機能性にも優れた左官材・モールテックスを採用。土間のような雰囲気で、白い壁や木との相性が抜群。妻お気に入りのアンティークの食器棚も空間になじんでいます
IKEAのキッチンをベースに、天板にモールテックスを使用したナチュラルなキッチン。引き出しの前板はナラ材で、白塗装ふき取り加工により、趣のある質感に仕上げました。閉めたときに木目がつながるようにデザインするという細かいこだわりも。
リビングにはソファなどの大きな家具がないので、ティピー(キッズ用テント)を立てて遊んだり、小さなテーブルを置いてカフェのような雰囲気を楽しんだりと、様々な使い方ができます。
【この住まいのデータ】
▼家族構成
夫39歳 妻36歳 長女7歳 次女6歳
▼リノベを選んだ理由
「ミニマリストのような、ものを持たない暮らしをしたい」と考え、当時住んでいたマンションのリノベーションを検討。「リノベーションEXPO」というイベントで出会った空間社に相談しているうちに、漠然としていたリノベのイメージが固まって依頼することに。
▼住宅の面積やコスト
専有面積/43.32㎡ 築25年(平成7年築)
IKEAのオープンシェルフを活用して大容量の収納を
寝室は鈴木邸で唯一のフローリング張りの空間。「子どもたちが小さいうちは、なるべく一緒にいたい」と考え、夜はここに布団を敷いて、家族4人で寝ています。
壁沿いには布団をはじめ、洋服や子どものおもちゃまで、あらゆるものを収納する大容量の棚を配置。「IKEAのイーヴァルというシリーズのオープンシェルフで、足りなくなったら好きなように増やしていけるので愛用しています」と妻。カゴやボックスをうまく組み合わせ、スペースをムダなく活用して収めています。
寝室には普段よく着る洋服などを吊るして収納できるラックも。
LDKとの仕切りに扉はなく、三角アーチのユニークな開口によってリビングとつながっています。
玄関土間や廊下、トイレの床もモールテックス仕上げに
玄関土間から廊下にかけての床も、LDKと同じモールテックスで統一しました。LDKに室内窓を設けたことで、廊下や玄関にも明るさがもたらされています。
室内窓があるおかげで空間に広がりを感じられ、デザインのアクセントにもなっています。
トイレの床と壁もLDKと同じ仕様に。塗装壁のようなクロスは、本当は塗り壁にしたかったという夫妻も納得の質感です。
4人家族で約43㎡というミニマム空間ですが、長い時間を過ごすLDKに集中してコストをかけ、こだわりを貫いたことで、コンパクトながら「カフェのような空間」での心地いい暮らしがかないました。
間取り(リノベーション前後)
リノベーション前
リノベーション後
設計/空間社
リノベ向き物件探し、同行内覧、資金計画、設計・施工まで一貫してサポート。「デザイン」「実用性」「コスト」の3要素のバランスに配慮した最良のプランを提案。上質感のあるデザインに定評がある。渋谷区、目黒区、世田谷区を中心とした城南エリアが得意
撮影/宮本梨絵 ※情報は「リライフプラスvol.37」取材時のものです