人生の中で最も大きな買い物といえる住宅。手に入れたあとも、ゆとりのある暮らしが送れるように、無理な資金計画は避けたいところです。まずは、家づくりにどのくらいお金がかかるのか?頭金はいくら用意すればいいのか?お金の基本を押さえていきましょう。

目次:

家づくりに必要なお金を確認しよう諸費用にはどんなものが含まれる?頭金を貯めるには速度も大事頭金を増やすにはこの作戦で!

家づくりに必要なお金を確認しよう

住宅資金と聞くと、建築費を思い浮かべる方も多いと思いますが、家づくりにはそれ以外にも、さまざまな諸費用が発生します。その額は建築費の約5%。仮に2000万円の家を建てるとすると、諸費用は約100万円かかります。

また、通常、建築費の80%が融資の上限額とされているため、残りの20%は頭金として用意することになります。100%融資可能とうたうローンもありますが、全額借り入れはリスクが大きすぎ。頭金が足りないときも相談に応じてくれる程度、ととらえましょう。

この頭金と諸費用が、自己資金で用意すべきお金です。

家にかかるお金のおおまかなイメージ

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諸費用にはどんなものが含まれる?

諸費用は建築費以外にこまごまとかかるお金で、税金や登記手数料、各種保険料などです。また地鎮祭、上棟式、挨拶の品など、儀式・風習にかかる費用も見過ごせません。新居での暮らしで必要となる家具や家電などの耐久消費財は、部屋数にもよりますがざっと200万円見積もっておきましょう。

「建築費の約5%+耐久消費財費用の合計額」を用意しておくのが理想です。

諸費用のおもな内容

<税金・保険料など> ・住宅取得にかかる費用:印紙税・登録免許税・登記手数料

・ローン手続きにかかる費用:印紙税・登録免許税・登記手数料・融資手数料

・各種保険料:団体信用生命保険料・火災保険料・地震保険料

<引っ越し代> 運送費・粗大ごみ処分費・電話移設費など

<耐久消費財購入費> 家具一式・家電製品・インテリア用品など

<そのほか> 地鎮祭や上棟式の費用・挨拶の品・交通費など

頭金を貯めるには速度も大事

頭金を多く用意すれば、総返済額も頭金との合計負担額も少なくすみます(表1)。

<表1:頭金の額で総返済額は大きく変わる>

(建築費3000万円・返済期間30年・固定金利型・金利1.5%の場合)

頭金の割合 頭金 毎月の返済額 総返済額 頭金+総返済額
2割 600万円 8万2828円 約2982万円 約3582万円
3割 900万円 7万2475円 約2609万円 約3509万円
4割 1200万円 6万2121円 約2236万円 約3436万円

頭金が2割の場合と、4割の場合では、約150万円もの差が出ます。

できれば頭金は3割用意しておきたいところ。ですが、2割の人があと1割貯める場合、貯める間にもし金利が上がってしまうとむしろ負担は大きくなります(表2)。貯めるのに数年かかるなら、見切り発車したほうが賢明といえます。

<表2:2割から3割に貯めている間に金利が上がってしまうと…>

頭金の割合 頭金 金利 毎月の返済額 総返済額 頭金+総返済額
2割 600万円 1.5% 8万2828円 約2982万円 約3582万円
3割 900万円 2.0% 7万7620円 約2794万円 約3694万円
3割 900万円 2.5% 8万2975円 約2987万円 約3887万円

上記の表からも、貯めている間に0.5%、1%と金利が上がると結局損してしまうことがわかります。

頭金を増やすにはこの作戦で!

親からの援助は非課税枠拡大

家を建てる際に、親からの援助を受けるケースもあります。通常の贈与税は110万円まで非課税ですが、住宅資金の場合には特例措置があります。「住宅取得等資金の非課税措置」というもので、一般住宅1000万円、省エネ等住宅1500万円まで非課税に(※2021年3月31日まで。それ以降、2021年12月31日までは一般住宅700万円、省エネ等住宅1200万円)。

さらに「相続時精算課税制度」の併用で、最大2500万円の上乗せも可能です(※2021年12月31日まで)。

<住宅取得等資金のための贈与税非課税枠>

住宅の種類
省エネ等住宅※ 1500万円
一般住宅 1000万円

※省エネ等住宅:断熱等性能等級4 または一次エネルギー消費量等級4以上、耐震等級2以上または免震建造物、高齢者等配慮対策等級3以上のいずれかに該当する住宅

いずれも延床面積50㎡以上240㎡以下が対象

妻との共有名義で頭金アップ

当たり前の話ですが、夫婦で資金を出し合えば頭金をグッと増やせます。この場合大切なのは、住宅を夫婦の共有名義で所有権登記すること。

もし妻名義の預金などから資金を出し、夫の単独名義で登記すると、妻の資金は夫に贈与したものと見なされ、贈与税がかかることがあるからです。妻の出した金額に応じ、例えば妻が資金を4分の1出したなら、住宅の持ち分も4分の1 として登記すれば贈与税はかかりません。

資金計画の基本は、どのくらいのお金がかかって、いくらぐらい用意できるかを知ることから。頭金をしっかり用意するためにも、まずは貯金の習慣をつけることも大切です。

※記載の内容はすべて執筆時点での情報です

●教えてくれた人/米村拓生
一級建築士、インテリアプランナー、住宅性能評価員。東海大学工学部建築学科卒。設計事務所「アトリエT+K」を主宰する