家づくりの際、室内の仕上げに自然由来の材料を取り入れるのが人気です。自然素材の魅力はなんといっても、その温かみある質感。そのうえ調湿性に優れた自然素材は、人の健康にいいだけでなく、家自体も長持ちさせてくれるのです。この記事では、壁と天井、建具に使用される代表的な自然素材を紹介します。ちなみに、上の写真は壁と天井を「珪藻土塗り」で仕上げた住宅。壁に使われる珪藻土は調湿性のほか消臭効果に優れ、なめらかな質感も魅力となっています。

珪藻土塗りの壁
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目次:

健やかな暮らしに配慮した、壁を仕上げる自然素材デザイン性とともに機能性も重視したい天井の仕上げ材建具は、個性的な素材を選びで遊び心を

健やかな暮らしに配慮した、壁を仕上げる自然素材

ドイツ漆喰の壁

壁に使用される自然素材でポピュラーなのが珪藻土や漆喰。また和紙や石、木材なども壁材として使用されます。壁は面積を広くとるので、素材によって空間の印象も大きく変わってきます。写真は紙の上からローラーで塗って仕上げる「ドイツ漆喰」の壁。珪藻土と同じく調湿性や消臭効果があり、ひび割れしにくい利点も。

土佐和紙を貼った壁

一方、こちらは町家の建て替えで実現した現代的で趣のある空間。壁に「土佐和紙」を貼って落ち着きあるリビングに仕上げられました。和紙は調湿・調光・吸音、さらに保温性に優れた素材。空間に差し込む光もやわらかに感じられるようです。

レッドシダーの壁

こちらの例では、内外の壁に、防腐成分が含まれる「レッドシダー」のパネルを連続させて張り、屋外との一体感を演出しました。吹き抜けで上下階もつながり、とてもダイナミックな印象。パネルなのでメンテ時に交換もしやすい利点もあります。

檜張りの浴室の壁

板張りの浴室は、水や湿気に強い「檜」や「サワラ」がよく使われます。写真は和風旅館を思わせる檜張りの浴室。水に濡れることでより芳香が増します。

ライムストーンを貼った寝室の壁

個性的な「ライムストーン」という石貼りの空間。手前に寝室、奥に浴室があり双方の部屋をガラスで仕切り、ホテルのような非日常感を演出しています。

デザイン性とともに機能性も重視したい天井の仕上げ材

杉板を張った天井

天井も床や壁と同様、面積が広いので、機能面も考慮したいスペース。壁と合わせて珪藻土などを塗れば、調湿や消臭効果が期待できます。また無垢の板張りにすれば吸湿性や断熱性にも優れています。
こちらは天井・床ともに「杉」を貼ったリビング。天井は心材(赤)と辺材(白)が混じった材に、柿渋で色味を馴染ませて仕上げています。

杉網代貼りの天井

小上がりの天井を伝統的な「杉網代張り」に。網代天井は、杉や竹などの薄板を互い違いにくぐらせて編んだ仕様です。

羽目板張りの天井

「珪藻土」を壁・天井のベースにし、勾配天井の部分は「羽目板」と梁の古材を表しにしてアクセントにしました。アイアンのシャンデリアとも相性バッチリ。

建具は、個性的な素材を選びで遊び心を

もみ和紙貼りの建具

玄関ドア、室内扉、窓、障子などの建具は、頻繁に目に触れる部位なので、質感はもちろんデザインにもこだわりたいところ。機能面では、和紙を使った建具なら保温性、吸湿性、木製サッシなら気密性や断熱性などが期待できます。
上の写真は「もみ和紙貼り」を貼った押し入れの建具。もみ和紙(東京松屋製)は、薄いオレンジの地に桜の柄を型押ししたもので、光沢がとても華やか。

ベイ松を使った格子戸

「ベイ杉」を使った玄関ホールの精緻なつくりの格子戸は、来客を迎えるのにふさわしい表情。ほんのりと土間の気配も伝えてくれます。

幾何学模様の障子

「障子紙」を貼った障子は幾何学模様の組子で遊び心をプラス。

木製サッシ

光庭と接する木製サッシ(プロファイルウインドー製)の窓。美しいだけでなく、気密性や断熱性、防火性も備えています。

ラワン合板の収納扉

収納の扉に「ラワン合板」を採用。設計者によれば「合板をうまく活用すると空間にメリハリがつく」とのことす。

アイアンのドアハンドル

突板張りの玄関ドア。こだわりは「アイアン」のハンドルです。木部の経年変化を待つように、サビ感のあるタイルを鉄に溶接して仕上げています。

自然素材は経年変化により、味わいが増すのも大きな魅力。長く住めば住むほど馴染み、時とともに愛着が湧くことは間違いないでしょう。家づくりにおいては、こういった素材選びにもこだわりたいところですね。

設計(壁)/小野喜規、高野保光、関谷昌人、吉村昭範+吉村真基、松永基、森 清敏+川村奈津子 設計(天井)/加藤武志、小嶋良一、眞田大輔、大浦比呂志 設計(建具)/松本直子、佐久間 徹、吉村昭範+吉村真基

撮影/伊藤美香子、大槻 茂、川辺明伸、桑田瑞穂、中村風詩人、日紫喜政彦、水谷綾子、目黒伸宜、山田耕司