50代以降ともなると、若い世代とは異なる発想で家づくりを進めたいもの。子どもの自立や自身の体力の低下などを視野に入れて検討しましょう。夫婦ふたりきりの生活になるのなら、本当に必要なものだけを残して、暮らしを小さくしてみるのもよいかもしれません。「建て替えorリノベ?」「バリアフリーは必要?」「夫婦の寝室は」…。50代からの家づくりにありがちな疑問について、建築家の佐久間徹さんが答えてくれました。

吹き抜けからダイニングを見下ろす
すべての画像を見る(全5枚)

目次:

Q1 今の家のリノベーションと建て替え、どちらがいい?Q2 将来的に子ども夫婦と暮らせるよう二世帯住宅仕様にしたいのですがQ3 最後まで自宅で暮らすためにはどんなバリアフリーが必要?Q4 夫婦の寝室は別々に用意したほうがいい?Q5 趣味のスペースをつくりたいが、予算がかかる?Q6 子どもが帰ってきやすい家にするため予備室を用意したいけどQ7 50代からの家づくりは何をいちばん大切にすればいいの?

Q1 今の家のリノベーションと建て替え、どちらがいい?

新築並みの費用がかかるリノベも。ケースバイケースで考えましょう

この場合、今住んでいる家の改善したい場所や内容によって違ってきます。家そのものにはさほど不満がなく、子ども室だった部屋を趣味室に変更したいという程度なら、部分的なリフォームで十分対応できます。しかし、キッチンを北から東へ移動したいとか、リビングを1階から2階へ移動したいとなると大がかりな改修になります。

例えば40坪の家のフルリノベーションより、25坪の家の新築のほうがコスト的には安くすんだりするのです。大規模なリノベーションを考えるなら、コンパクトで密度の濃い家を新築することも検討してみてはいかがでしょうか。

室内階段のあるダイニング吹き抜け

Q2 将来的に子ども夫婦と暮らせるよう二世帯住宅仕様にしたいのですが

計画前に、子世帯とよく相談してください

二世帯住宅を計画する場合、親も子も二世帯で暮らすことにメリットがあると思っているなら問題なありません。しかし、親世帯が一方的に二世帯住宅を用意するというのは避けた方がよいと思います。

特に独立した息子を持つ親御さんからこのような相談をされると、僕は「あきらめたほうがいい。誘うなら、十中八九だめだろうと思ったうえで誘ってください」と言うようにしています(笑)。
親が前のめりで進めていくと、折り合えることでも折り合えなくなることがあります。
具体的に計画を進める前に親子でよく話し合い、お互いが納得したうえで計画するのがベストです。

Q3 最後まで自宅で暮らすためにはどんなバリアフリーが必要?

今は必要なくても、そのときのために準備をしておくという方法があります

一般的に、加齢に伴い階段の上り下りが苦痛になるといいます。僕がよく提案するのは、上下階の同じ位置に納戸を設け、吹き抜けでつないで、エレベータが設置できる場所を準備しておく方法です。
これならエレベータを設置したくなったときには大きな工事も必要なく、コストも削減できます。

また本当に階段のある家で暮らすのがきつくなってきたときには、家を売却してフラットな家に住み替える手もあるでしょう。バリアフリー仕様は、どこかでこの程度にとどめておこうという線引きが必要なのではないでしょうか。

キッチンにつながったダイニングテーブルのある空間

Q4 夫婦の寝室は別々に用意したほうがいい?

個室を2つ用意し、フレキシブルに使えるようにしては?

別々の寝室にしたくても、なかなか設計士に言いづらいという方もいらっしゃいます。僕はこちらから「今は一緒でよくても、夫婦それぞれの部屋を用意しておきませんか」と提案しています。最初は一方を夫婦の寝室、一方を共有の趣味部屋などにしてもかまいません。個室が2つあれば将来どのようにでも使えるのですから。
別々のテリトリーをつくり個々の時間を大切にすることで、夫婦ふたりの暮らしがうまくいく家がつくれるのではないでしょうか。

Q5 趣味のスペースをつくりたいが、予算がかかる?

床面積を縮小すれば、予算を捻出できます

オーディオルームやアトリエなど、趣味のスペースにお金をかけたいとなると、当然通常の家よりは予算を多くとらなければなりません。
その場合、家を小さくすればその分の予算が捻出できます。

ふたり住まいで、床面積30坪程度の家を予定していたなら、面積を23~24坪に縮小し、6坪分の費用を趣味部屋の予算に充てればいいのです。広さをあきらめても、より有意義なお金の使い方ができるのではないでしょうか。

CD棚とギターのある趣味室

Q6 子どもが帰ってきやすい家にするため予備室を用意したいけど

本当に必要なスペースかどうか、よく考えて

独立した子どもが帰ってきたときのために予備室や布団の収納場所を確保したいという要望はよくあります。
でもそのスペースは本当に必要ですか?
年に1~2回の宿泊で家族同士ならば、その日だけ主寝室を子どもたちに明け渡して、親はリビングの一角で寝てもいいのではありませんか。布団などもレンタルすれば、そのための収納スペースも必要なく、事前に干す必要もありません。もし、なんとなく用意しておいたほうがいいという程度の考えなら、それよりは日々の自分たちの暮らしのためのスペースを第一に考えていただきたいですね。

落ち着いた雰囲気の和室

Q7 50代からの家づくりは何をいちばん大切にすればいいの?

思い悩むより、好きなことを優先してみては?

50代以上の方は、先々のことをあれこれ心配してしまいがちです。しかしこの先の生活を思案して縮こまる必要はないのではないでしょうか。むしろ思い切って、自分の好きな家づくりに向き合ってほしいと思います。

例えば土間に趣味のバイクガレージをつくったとしても、そこを使わなくなったらフローリングを張って別の部屋にしてもいいのです。要は今の暮らしを楽しむための家づくりをしていただきたいということです。

監修/佐久間 徹さん(1977年東京都生まれ。2002年東京理科大学工学部第一部建築学科卒業。有限会社アパートメント勤務を経て、'07年佐久間徹設計事務所設立。自然素材を生かした、落ち着いたたたずまいの家づくりに定評がある)
画像提供/佐久間徹設計事務所