家づくりのきっかけは人それぞれですが、子どもの誕生や子どもの入学を機に考え始める人も多いようです。そこで今回は「30代の家づくり」に注目。初めて住宅を購入する30代が家づくりで直面しがちな疑問を、佐久間徹設計事務所の佐久間徹さんに聞いてみました。

白い切り妻屋根の家
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目次:

Q1 土地を買ってからでないと、設計の相談はできないの?Q2 夫と妻の意見が食い違う。まとめてから相談したほうがいい?Q3 設備や家具のショールームはどのタイミングで行ったらいい?Q4 子どもが複数いる場合、子ども部屋はどう計画したらいい?Q5 希望がたくさんあるけど、すべては無理。コストダウンのポイントは?Q6 中古住宅を買ってリノベするのと新築、どっちがお得?

Q1 土地を買ってからでないと、設計の相談はできないの?

土地選びから相談できます

結論からいうと相談できます。若い人が失敗しやすいのは、土地と建物の予算配分を考えず、不動産屋にすすめられるまま高価な土地を購入してしまうことなのです。その結果、住宅建築にかける予算を減額しなければならないことも。
建築のプロなら、土地と建物の総予算を考慮したうえで適切な配分を見極め、客観的な助言ができます。不安な方は土地選びも合わせて相談をしてください(編集部注:近年では、建築事務所やハウスメーカー、工務店なども、土地探しから相談にのってくれる会社が増えています)。

無垢の木材をふんだんに使ったダイニング

Q2 夫と妻の意見が食い違う。まとめてから相談したほうがいい?

第三者のいるオープンな場で意見をすり合わせましょう

家づくりにおいて、夫婦の考えが食い違うことはよくあることです。打ち合わせ中にけんかが始まることも珍しくありません(笑)。けれど僕は「意見をまとめてこないでください」とお願いしています。オープンな場で、お互いが思っていることを言い合って議論したほうがあとで不満が爆発することもなく、結果的に納得のいく家づくりができるからです。

煙突が吹き抜けまで伸びる薪ストーブのあるLDK

Q3 設備や家具のショールームはどのタイミングで行ったらいい?

工事費の全容がみえた段階で訪れるのがベター

参考として見にいくのはよろしいと思いますが、あまり早い段階でショールームに行っても決められないことがたくさんあります。高い設備機器や素敵な家具を見ても、あとであれもこれもあきらめるという作業の連続になるのはちょっと切ないですよね。本気で選ぶなら、プランが固まって見積もりを取り、工事費の全容が分かってからショールームを回ることをおすすめします。

屋根の形をした吹き抜けのある2階リビング

Q4 子どもが複数いる場合、子ども部屋はどう計画したらいい?

フレキシブルに対応できるようにしましょう

最初から子ども部屋を何室確保すべきと考えず、子どもの成長に合わせて柔軟に変えられるスペースをつくっておくといいでしょう。例えば、9畳と6畳の部屋を用意し、子どもが小さいうちは9畳に家族皆で寝て、6畳は子どもの遊び場兼納戸にする。個室が欲しい年齢になったら、間仕切り壁で仕切ればいいのです。最低7.5畳あれば2人分の子ども室はできますし、9畳あれば子どもが3人でもなんとかなるものです。

Q5 希望がたくさんあるけど、すべては無理。コストダウンのポイントは?

床面積を減らしたり、階高を低くすれば効果的にコストダウンできます

内装も設備も、どれも削りたくないと行き詰まってしまったときに、僕はよく「ちょっと家を小さくしてみませんか」と提案しています。漠然と床面積30坪くらいの家が欲しいという人は多いのですが、例えばそれを2~3坪小さくすれば、ざっと100万~150万円ぐらいのコストダウンとなることがあるのです。その差額をキッチンの造作や床暖房、内装のグレードアップなどに回すことも可能になります。床面積だけでなく、階高を下げることでも同様にコストダウンが図れます。

横長の窓が美しいダイニングルーム

Q6 中古住宅を買ってリノベするのと新築、どっちがお得?

リノベも意外に高コスト。諸条件をトータルに判断しましょう

ローンを組みにくい事情がある人や、一生そこに住むかどうか確かではないという人にとっては、中古住宅を買ってリノベーションする方法は費用対効果が高いといえます。しかし、耐震補強をしたうえでフルリノベーションを行うとなると、小さな新築住宅が軽く建つぐらいの費用がかかってしまいます。工期も新築と大して変わらないので、一概に新築よりリノベがお得とはいえないのです。

新築とリノベのどちらかにするかを検討する際には、目の先のコストだけではなく、耐震性などのクオリティや機能性をどこまで求めるか、またその家にこの先何年住むのかなどをトータルに考えて判断するといいと思います。

30代の家づくりでは、子どもが何人になるのか、この先何十年もローンを返していけるのかなど、不確定な将来に不安を感じがちです。その反面、期待と希望にあふれるのが初めての家づくり。信頼できるパートナーを見つけて、思う存分家づくりを楽しんでください。

監修/佐久間 徹さん(1977年東京都生まれ。2002年東京理科大学工学部第一部建築学科卒業。有限会社アパートメント勤務を経て、'07年佐久間徹設計事務所設立。自然素材を生かした、落ち着いたたたずまいの家づくりに定評がある佐久間徹設計事務所)
画像提供/佐久間徹設計事務所