縁側のようなデッキに座り、隣接する公園の緑を気持ちよさそうに眺めるのは共働きのIさん夫妻。夫妻が望んだのは「家事がラクな家」「和風すぎない木の家」「バーベキューができる庭」があることなどでした。設計は名古屋市にある悠らり建築事務所に依頼。依頼の決めては、同事務所が手掛けた事例が自分たちの好きな家のイメージに近かったから。30代前半と若くして家づくりを決意した夫妻は、土地探しから相談にのってもらったそうです。
すべての画像を見る(全13枚)家事動線がスムーズなDK中心のプラン
愛知県瀬戸市に暮らすIさん夫妻が、悠らり建築事務所の安藤亨英さん・節子さんにも相談しながら見つけたのが、東西に伸びる約55坪の細長い敷地。南側には森林公園が広がり、家の中から豊かな自然を望むことができます。
ふたりが望んだのは、「木を使いたいけれど和風すぎない家」。焼杉とガルバリウム鋼板を組み合わせた外観は、木の温もりの中にもモダンさが感じられます。その佇まいは、周囲の緑に違和感なく溶け込んでいます。
そして、共働きであるがゆえに大きな課題となったのが「家事がラクにできる家」でした。
安藤亨英さん・節子さんは、ふたりで協力して家事を行うIさん夫妻の動線を考慮し、アイランドキッチンとダイニングテーブルを横に並べたDK中心のプランを提案しました。キッチンには広い作業スペースを確保し、背面には収納と長いカウンターを設置。
これならふたりでもゆったり作業ができます。またカウンター下に設けた窓もポイント。窓は風や光を取り込むだけでなく、抜け感も感じさせてくれます。
いつも庭の緑を眺めながら料理ができるキッチンは、夫妻の希望に合わせて製作されたオリジナル。キッチンの前の窓を開ければデッキともつながり、出入りがしやすいのもポイント。希望のひとつだった「バーベキューができる庭」も実現しました。
キッチンの隣には洗面脱衣室を配置。洗濯機もここに置いています。洗濯ものをウッドデッキで干し、取り込んだら広い洗面カウンターでたたんで、すぐそばのウオークインクロゼットへ収納。一連の作業が最短の動線でできるので快適だそうです。
多目的に使える小上がりの畳スペース
玄関側に配したリビングとキッチンダイニングとの間には、多目的に使える小上がりの畳スペースを設置。障子を閉めれば、来客時には客間になります。
掘りごたつ式のデスクがあるので書斎としても使うことができ、家での仕事も可能に。デスク横の小窓も効いています。窓に目を転じれば、庭の緑が眺められます。
トップライトから光が降り注ぐリビングスペース。玄関入ってすぐにリビング→畳スペース→ダイニング、キッチンと続きます。
畳スペースは、リビングとダイニング、どちらからも目が届くので、子どもが生まれたら子育てためのスペースとしても活躍しそう。「畳スペースをつくってよかった。やっぱりホッとするし、使い勝手もいいんです」(妻)。
自然素材を多用し、将来にわたって心地いい家に
床材にはカバ、壁には漆喰と、大きな面積に自然の素材を使用することで温もりが感じられます。自然素材は経年変化を楽しめるので、何年先になっても心地よく暮らせそうです。
ダイニングテーブルは名古屋市の家具工房・深見木藝でオーダー。座り心地にこだわって選んだ飛騨家具のチェアも夫妻のお気に入りです。
家のどこにいても自然を感じられるのがこの家の特徴。2階のバルコニーからは、手が届きそうな隣地の緑が。傾斜地なので遠くには街並みも望めるロケーションです。
屋根なりの天井が広がりを感じさせてくれる2階には主寝室と子ども室が配置されています。子ども室は、将来的に2室に仕切れるように、ドアも2つ、照明や配線なども2室分用意されています。
庭には、ジューンベリーや梅、キンカンなどを植え、小さな家庭菜園で野菜の収穫を楽しんでいます。縁側のような長いウッドデッキは、ひなたぼっこやお月見なども楽しめそう。
「安藤さんはご夫婦で設計されているので、夫婦それぞれの気持ちも分かってくれて。家だけでなく、インテリアまでトータルに相談できたのも心強かったです。打ち合わせをしながら、自分たちの望む家の形が徐々に明確になっていった気がします」と妻。
「将来を見越したつくりになっていますが、まだ子どもがいない時期に建てたからこそ、自分たちがやりたいようにできたのもよかったなと思います」と夫。家族構成の変化にも対応しつつ、ふたりの充実した暮らしを楽しめる住まいが実現しました。
設計/悠らり建築事務所
撮影/日紫喜政彦
取材/松浦美紀
※情報は「住まいの設計2020年4月号」取材時のものです。