「戸建ては管理や手入れが大変そう」と考えていたMさん夫妻は、工夫次第で自分たちの思い描く家が実現できると感じた中古マンションのリノベーションを選択。ファイナンシャルプランナーに今後のお金のことを相談しながら予算を検討し、土地勘があった大阪市豊中市に建つ築年数44年のマンションを1500万円で購入します。平野玲以建築設計事務所に設計を依頼し、工事費1000万円(税・設計料込み)をかけて、3人の子どもとのびのびと過ごせるぬくもりあふれた空間をつくり上げました。
すべての画像を見る(全13枚)ワイドな畳スペースは小上がりにして収納量を確保
敷地内に子ども用プールや豊富な緑があり、住民同士の挨拶が心地よく交わされるマンションにM邸はあります。特徴的なのはLDKの半分を占める畳敷きの小上がり。
リビングであり、寝室であり、また子どもたちの遊び場でもあるという多様な畳スペースは、床下が収納になっていて、主に寝具をしまっています。通常よりも薄いタイプの畳を選ぶことで、下の収納スペースをできるだけ広く確保したのだそう。
さらに、夫の希望だった大容量のオープン棚にも本やDVD、子どものおもちゃまでたっぷりしまえるという、収納力の高い空間になりました。
畳スペースからリビングを見ると、3人の子どもたちのデスクが並ぶスタディスペースがあります。デスクはキッチンカウンターや小上がりの天井と同じラワン合板で造作しました。上部にスリットを設けることで、壁の向こうに位置する玄関に光を届けています。
小上がりはぐるりとL字型に障子で囲われています。あえて窓側にも障子を設けているのは、断熱効果を期待してのこと。
また、明るい窓際にはモルタル土間のキャットスペースをつくり、猫用トイレを配置しました。窓の上には、雨の日などに便利な室内干用のバーも取り付けてあります。
ナチュラル空間にスッと溶け込む男前キッチン
部屋の東西に窓があるため、リビングダイニングは心地よい風が通り抜けます。フローリングには色ムラや節が多いのが特徴である、アカシアの無垢フローリングを採用。「表情があるフローリングの方が好みなので、気に入りました」と妻は話します。
キッチンカウンターはラワン合板で仕上げて、リビングダイニングの雰囲気に似合うナチュラルなテイストに。カウンター前にダイニングテーブルを配置したので、配膳や後片付けもスムーズです。
壁一面にタイルを貼ってアクセントにしたキッチン。「仕事中もずっとタイル選びのことで頭がいっぱいでした」と妻は笑います。
最終的にはtoolbox(DIYショップ)で購入した「ハニカムタイル」をチョイス。コバルトブルーの六角形タイルはムラがあり、どこか懐かしい雰囲気をまとっています。
厨房のような無骨なキッチンを希望していたMさん夫妻は、予算に合うIKEAのステンレスキッチンを採用。広い天板を利用して、子どもたちとパンやお菓子づくりを楽しんでいるのだそう。大量の食器や調理器具が洗える食洗器を今後設置する予定です。
キッチンからはリビングダイニングが一望できます。小上がりの障子をすべて閉じると、空間全体が端正な表情に一変。夫が夜勤明けの日中も、障子が日差しをやわらかく遮ってくれるのでぐっすり寝られるそう。
5人そろって靴を履けるゆったりめの土間
趣味のロードバイクが置けて、家族5人が一斉に靴を履ける広い土間は妻が最もこだわった空間。収納には靴のほかに自転車のツールもしまってあり、このスペースでメンテナンスをしているのだそう。
廊下沿いには家事室を兼ねたウォークインクロゼットを設けました。衣類のほか、家電や季節用品などもこちらに収納。また、懐かしい雰囲気の引き戸のガラスには、防災も考えてデザイン性の高い飛散防止フィルムを貼っています。
ウォークインクロゼットの向かいはサニタリー。LDKに入る前に手を洗って洗濯物を出し、向かいにある家事室で着替えを済ませるという動線が整い、子どもたちはひとりでも片付けができるようになったといいます。
祖母宅の洗面台をイメージして、花の形のタイルを施したノスタルジックな仕上げに。収納扉の右側にはティッシュペーパー入れをセッティングして取り出しやすくし、その下にダストボックスにつながる丸い穴を開けています。花粉症の時季にとても役立つとのこと。
あえて子ども部屋は設けず、リビングの一角にスタディスペースにデスクを造作したMさん夫妻。
「3つのデスクと3つの棚を横一列に並べました。小学生のお姉ちゃんは、ここで宿題をしています。保育園に通う次女も真似して隣の机に座ったりして(笑)。自分だけの場所ができてうれしいようです」と3人の子どもと猫、みんながリビングでのびのびと暮らすM邸でした。
設計/平野玲以建築設計事務所
写真/水谷綾子
※情報は「リライフプラスvol.31」取材時のものです