以前は都心の高層賃貸マンションに暮らしていた小川夫妻。「便利で眺めもよかったけれど、だんだんと土や緑が身近にあり、季節の移り代わりが感じられる場所に住みたい」と思うようになり、1階の庭付き物件を探し始めました。希望の条件のマンションにはなかなか出会えないなか、やっと見つけたのはゆったりとした敷地と専有庭、豊かな緑がある東京都杉並区のリノベ済み物件でした。建築家である妻が設計を担当し、オーダーメイド家具でスペースを無駄なく活用した、自然に囲まれる家をつくり上げました。
すべての画像を見る(全8枚)垂れ壁でゆるくゾーニングしたワンルーム空間
マンション周辺は東京では珍しいくらい緑に囲まれた環境。その周辺環境を生かして、室内のどこにいても外の空気が感じられる大きなワンルームの間取りにしました。
既存のコンクリート壁を利用した垂れ壁によって、パブリック、プライベート、セミプライベートの3つのスペースをゆるやかに分割。将来的には空間を仕切り、個室を作ることも可能なのだそう。壁や扉をなくしたオープンな空間は、風が抜けて光が隅々まで行き渡ります。
ワンルームのような小川邸は、玄関からLDKにかけても扉がありません。玄関土間と幅を合わせたワイドな廊下の床にはフレキシブルボードを張り、土間のモルタルと雰囲気を馴染ませ解放感をプラス。
土間の大きな姿見は引き戸も兼ねていて、中は靴収納になっています。
廊下からLDKに入ると、リビング側にはL字型のソファが。空間の幅に合わせてオーダーメイドしたもので、座面の下と背もたれの奥を収納にあてた機能的なつくりになっています。
ダイニングテーブルもオーダーメイドしたもので、イタリアのカステリ社から公共用スタッキングチェアとして誕生したカステリチェアを合わせました。
ステンレス×白磁器タイルで清潔感のあるキッチンに
キッチンは壁側に白い磁器タイルを貼り、ステンレスのキッチンと共に清潔感を醸し出しています。随所に置いたグリーンの彩りがアクセントに。
キッチンにはミーレの洗濯乾燥機を組み込んだので、家事がはかどるのだそう。
リノベ済物件だったため、水回りの設備を上手に活用。既存のキッチンは向きを変えて、ワークトップと面材をステンレスに変更してリユースしました。
食器棚も兼ねるステンレスの特注カウンターとキッチン本体との間のスペースは、ふたり並んでも作業しやすいように広さを確保。窓を開けると緑が眺められて、リラックスしながら料理を楽しめます。
LDK、廊下とゆるやかにつながる寝室
玄関からつながる廊下にはデスク兼書棚を設置して、夫妻共用の書斎にしています。その横にあるカーテンでゆるやかに仕切った寝室は、床を一段上げてゾーニング。床との段差は収納に有効活用しているほか、ベンチ代わりにも。
寝室がある北西側は敷地内の通路に面していますが、ほとんど住人しか通らないため、静かで寝室にぴったりなのだそう。
床とクロゼットの扉には、ソファや廊下のデスクと同じエイジング加工のオークフローリングを利用していて、その質感が温もりや安らぎをもたらしています。
水回りは既存に手を加えてリフレッシュ
造作によるワイドな洗面台のカウンターには、LDKや廊下の床と同じフレキシブルボードを採用。シンクはカウンター上の置き型とし、下部に大容量の収納を設けました。小物置きにもなっている小窓からは、やさしく自然光が入ります。
また、トイレはリノベ済で新品だったため、そのまま使用。床と壁、天井の仕上げをリフレッシュし、壁にDIYで飾り棚をプラスしました。
タワーマンションでは得られなかった自然に囲まれた暮らしを実現させた小川さん夫妻。広い専有庭は既存の植栽を整理して、新たな植栽を考えているのだそう。「眺めて楽しめる木を植えたいですね」と夫は話してくれました。
設計 moyadesign一級建築士事務所
撮影/山田耕司
※情報は「リライフプラスvol.31」取材時のものです