名古屋市に暮らすKさん夫妻が、住み慣れた地域で見つけた土地は、間口7.4m、奥行き21mの細長い形状で、隣地に中層の集合住宅が建っているというもの。そんな条件下でも、家族4人がのびやかに暮らす、開放感にあふれた住まいが完成。光と風だけでなく、空の眺めまで日常の生活に取り込んだダイナミックな住宅です。
すべての画像を見る(全14枚)大窓で光と風を呼び込むダイナミックなリビング
Kさん夫妻が家づくりにあたっての要望は、車2台分の屋根付き駐車スペース、吹き抜けリビング、リビングと一体となるテラスがあることなど。
設計を依頼したのは、妻の高校時代の同級生だった武藤圭太郎さんです。「気さくな人柄でざっくばらんに話せます。だから家づくりもいろいろと相談しながら進められると思いました」(夫)。
武藤さんは敷地の形状や環境に考慮し、生活のメイン空間となるLDKを2階に配置。そしてリビングには、約6mの吹き抜けに沿って大窓を設けました。光と風をたっぷり得るとともに、目の前に大きな空が広がります。
3階から見下ろすと、よりダイナミックさが感じられますね。黒いサッシがガラス窓のアクセントになり、白を基調とした空間を引き締めてくれています。ちなみに左側最上部の窓ですが、通風用に開閉できるようになっているんですよ。
リビングに続く、キッチン側も見てみましょう。ダイニングキッチンとリビングの間にスキップを設けて、食の場とくつろぎの場を緩やかにゾーニングしています。
「キッチンに立つと、正面に開放的な眺めが広がります。リビングにいる家族の様子も分かる、お気に入りの場所ですね」(妻)。さらにリビングの大窓には、家全体に光を届ける役割も。
「大窓から入れた光を、3階や玄関にも届けられるように計画しました」と武藤さん。スチール製の階段は、踏み板を薄くして軽やかなデザインに。蹴込み板がないので、上階の光を下階へ落とす効果もあるんですよ。
空中の庭と2台分の駐車スペースを確保
さて、間口7.4m、奥行き21mと縦に長い形状の土地ですが、「車2台分の屋根付き駐車スペース」はどのように実現したのでしょうか。
それは、2階テラスの床をトラス構造(部材同士を三角形につなぎ合わせた構造形式)で吊ることで解決しました。駐車に邪魔となる柱が不要になり、車2台分の駐車スペースを得ることができたのです。トラスの側壁があることで、外観もとても個性的!
そして駐車スペースの上は2階のテラス。ここはKさん家族だけのプライベートな空中の庭なんです。
トラスの三角形の側壁が隣家からの視線を遮ってくれるので、プライバシーも守られます。デッキと人工芝を敷いたテラスは、子どもたちが駆け回れるほどの広さ。2種の素材を採用したことで、見た目も楽しく、いろいろな使い方ができそうですね。
リビングとデッキの床をフラットにつなげたことで、室内外の一体感が生まれました。
内窓とスキップフロアで家じゅうをつなぐ
住まいの隅々に光と風を取り込めるよう、間取りにもひと工夫。
平面を田の字型に4分割して、螺旋状に上がっていくスキップフロアを採用。1階から3階までの空間がスキップでずれながらつながるため、実際の面積以上の広がりを感じることができます。
そして、もうひとつポイントが。
3階の寝室と子ども室にはリビングに向けて内窓をつくったので、リビングにいる家族とコミュニケーションを取りやすいのです。
このフロアにある寝室は、子ども室と屋内バルコニーと階段でもつながっています。
空間同士の連続性をより高めるとともに、お互いの気配を感じられるように配慮されているのですね。
3階から半階下がった、2階と3階の間には、子どもたちが使うワークスペースがあります。キッチンにいると、子どもたちの声が聞こえてくるそうですよ。
こちらは1階で、光が程よく注ぐ玄関の脇に、ゲストルームとしても使える和室を配置しました。
和室はシャープなラインとシンプルな色づかいでまとめられています。他の部屋とは異なるしっとりと落ち着いた雰囲気ですね。
1階の水まわりもご紹介しましょう。浴室は「ゆったりと湯につかれるリラクゼーション空間にしたい」との要望から、最大サイズのバスタブを採用。
それにしても大きなバスタブ! 子どもたちと楽しみながらゆっくり入浴できそうです。
こちらは、ガラス扉から、北側の穏やかな光が注ぐ洗面室。数人で同時に使える大きめサイズの洗面台だから、朝の身支度もスムーズに行えるそうですよ。
夢がかなった家で暮らしはじめたご夫妻は「光がたっぷり入るリビングは、想像していた以上に心地いいですね」。仕事と育児で忙しい日々の中でも、この空間で家時間を楽しむことが最高のリフレッシュだといいます。
設計/武藤圭太郎建築設計事務所
撮影/桑田瑞穂
※情報は「住まいの設計2017年11月号」取材時のものです