「中古住宅をリノベーションして暮らしたい」と考えていたデザイナーの小林さん。物件探しに難航していたあるとき、売れ残って手頃な価格になっていた東京・杉並区の新築分譲住宅に出会いました。駅近の立地も希望通りだったためリノベーション前提で購入し、2階のみブルースタジオに工事を依頼。お気に入りのデザイナーズ家具に囲まれて暮らす、長年の夢をかなえました。
2階の間仕切りをなくして開放的なワンルームに
すべての画像を見る(全9枚)新築で購入したメリットを生かして、1階は子どもが大きくなるまで既存のまま活用し、家族が長い時間を過ごすLDKがある2階だけをリノベーションすることを決めた小林さん。
学生時代からミッドセンチュリーのインテリアが大好きだった夫がイメージしたのは、大好きな家具が映えるミニマルな空間でした。
LDKの隣にあった個室の壁を取り払ってワンルームにし、キッチンはフロア全体を見渡せる配置に変更。
リビング奥の窓辺には、フリーランスのデザイナーである小林さんのワークスペースを新設しました。
アール壁が部屋の奥へと視線を導きます。
2階に張られていた天井を取り払い、屋根を支える小屋組みの構造を表したLDKはのびやかな印象に。
閉じられた空間だったロフトにはLDKを見下ろせる換気用の小窓を開け、キッチンに立つ家族と会話ができるようにしました。
モノトーンのミニマルな空間を実現
室内は、モノトーンを基調に雰囲気を一新しています。シンクで作業しながらダイニングの家族と会話ができるオープンキッチンは、ワークトップや面材にマットなブラックのメラミン化粧材を使ってシャープな表情に。
暖房入りの床は、既存床に白いタイルを貼り重ねました。
モノトーンの空間にアクセントを添えるのは、パントリーの壁面に使ったピンクと柔らかな曲面のデザイン。見せたくない冷蔵庫は壁と一体化した扉の内側に収納し、キッチンの一部は鏡張りにして空間を広く見せるよう演出しています(写真右)。
さらに、以前住んでいたマンションで感じていたという「残念なディテール」も変更。例えば収納扉はツマミや扉の枠をなくして壁とフラットに納め、床と壁の境に付けられている巾木もなくしました。
お気に入りの家具や照明を厳選した理想の空間
ミニマルな空間で存在感を放つのは、小林さんが選び抜いたお気に入りのデザイナーズ家具たちです。
ベルギーの木製家具ブランド、エスニクラフトの幅2mのダイニングテーブルは無塗装の無垢材を使っており、木の経年変化を楽しめるのが魅力。
ダイニング照明はアルヴァ・アアルトの名作「ゴールデンベル」を3灯吊りで合わせ、モノトーンの空間に合わせて黒いフレームのYチェアをセレクトしました。
壁になじむよう白を選んだバーチカルブラインドは、窓の上ではなくあえて天井際の高い位置に取り付けることで窓の高さを演出し、空間に広がりをもたらしています。
オープンキッチンで存在感を放つキッチン水栓は、ホースが引き出せるマットな黒い仕上げのシャワー水栓に。
パントリー内部のピンクの壁を照らすフロスのブラケットはマイケル・アナスタシアデスのデザインで、細いパイプに支えられたライトが宙に浮かんでいるかのようです。
厳選したアイテムが並ぶお気に入りの住まいに、待望の長男も加わった小林さん家族。「長年の夢が叶いました」と、うれしそうに話してくれました。
設計/ブルースタジオ
撮影/伊藤美香子
※情報は「住まいの設計2019年2月号」取材時のものです