夫妻と2人の元気な男の子、そして愛猫(てんてん オス/9歳)が、仲よく暮らすOさんの家。東京の住宅密集地にありながら、家の中は光が満ち、開放感にあふれています。プライバシーがしっかり守られた中で、家族みんながのびのび&リラックス。L字型の敷地を生かしたストレスフリーな住まいを実現しました。
L字型の敷地に沿った壁を設けて、安全・安心!
結婚後、夫の実家が所有していた築30年ほどの戸建てで暮らしてきたOさん一家。子どもも誕生し手狭になってきた頃、アパートが建っていた隣の敷地が運よく売りに出されます。そこでOさん夫妻はその土地を買い取り、家を建てることを決意しました。
合筆したことで敷地はL字型に。敷地面積は約55坪となりました。
設計の依頼を受けたアトリエA5は、敷地の形状をそのまま建物としてL字の中央にLDKを配し、両端に中庭を設けました。Rのある外壁で中庭や駐車場を丸ごと包んでいます。
こちらは外壁の内部で、駐車場のある南側の中庭です。
モミジの木の奥に玄関扉がありますが、右手の窓からリビングに直接入ることもできます。外壁に設けられた扉とシャッターを閉めれば、プライバシーが保たれた空間に。
「プライバシーを守りたい」というご夫妻の思いですが……、O邸は戸建てや集合住宅が密集する住宅地にあり、周囲を見回すと昼間でもカーテンやシャッターを閉めている家が目立っていました。
やはり、周囲を気にせずのびのびと過ごしたいもの。ご夫妻は、プライバシーと開放感の両方を望んだのです。
両端に中庭を配し、光あふれるLDKに
新居では暮らしが一変。外観は窓が少なく閉じられた印象ですが、内部は白い壁に光が反射する明るい空間となっています。さらに壁に囲われているので、子どもが騒いでも心配無用となりました。
「うちは男の子2人なので、とにかく動き回るし大声で騒ぐので大変。でも、今は騒いでもご近所に迷惑がかからないと思うので、イライラ怒らなくてもよくなりました」(妻)と、ホッとした様子。
広いLDKや中庭でサッカーやフリスビーなどもでき、頻繁に公園に行かなくてもよくなったといいます。
完全にプライバシーが守られているので、子どもたちも思い切り遊ぶことができますね。広いリビングを希望した夫も、大きな吹き抜けと中庭に面した開放的な空間に大満足。
壁面の窓は最小限に抑えているため、トップライトから採光を得ています。
大きなソファに座って外を見れば、木々が風にそよぐ様子も目に入ってきます。安心してくつろげる空間ですね。
リビングと同じく、Rを描く有機的な白い壁が印象的な階段。
こちらは専用のバスコートを備えた浴室です。
他の中庭と同様に外壁で囲われているので窓を開けて、オリーブの木を眺めながらゆったりとバスタイムを楽しめます。
リビングの吹き抜けに面した子ども室。
隣にもうひと部屋子ども室が用意されており、個室ごとに異なる色のアクセントウォールが採用されています。
工夫いっぱいの家で、猫もストレスフリー
子猫のときに保護団体からO家に迎えられたてんてん。家づくりの際には、てんてんへの配慮も忘れてはいません。猫は高いところが大好き。大きく湾曲したリビング壁面の棚の上をさっそうと歩きます。
てんてんが外を眺めるのに、ちょうどいい窓も設けられています。キャットウォークを兼ねる棚には右手のステップから上り下り。
網戸に取り付けるタイプの猫ドアで、テラスと室内の出入りも自由。
リビングにも猫用ドアを。
好きなときに好きな場所に行けるから、てんてんもストレスフリー。2階テラスの網戸にも猫扉を設置していますよ。素材にもひと工夫。床には猫の毛が目立ちにくいアカシアのフローリング、壁には引っかき傷がつきにくいビニールクロスを採用しました。
以前に比べると、壁での爪とぎは劇的に減ったそうです。「以前は壁や襖がボロボロだったのですが、爪が引っかからないので面白くないらしく、壁では爪とぎをしなくなりました」(妻)。
アウトドア用ソファを設置した中庭は、外からの視線を気にせずにくつろげる、憩いのスペース。外光が白い壁に反射するから、シマトネリコの緑も鮮やかです。
外の空気に触れられる中庭は、てんてんの大好きな場所のひとつ。高い壁で囲まれているので脱走の心配はありません。
「ふと見ると、中庭のソファで日向ぼっこをしていたりするんですよ」(妻)。猫の食事場所は、お皿を洗ったり水をくんだりするのに便利な洗面室に。
猫用トイレですが、当初は人間のトイレに近い洗面室に置く予定でした。しかし、全自動洗浄トイレを採用したことで砂を流したりする必要がないため、静かで落ち着ける玄関収納に置くことになりました。
子どもが走り回っても近所迷惑にならないので、親もストレスフリー。そして、猫の世話や室内の掃除は、壁材や床材を工夫したことで、傷や汚れを気にせず、人も快適で安心して暮らせます。家族みんながハッピーになる家ができ上がりました。
設計/清水貞博+松崎正寿+清水裕子(atelierA5 建築設計事務所)
撮影/山田耕司(扶桑社)
※情報は「住まいの設計2019年2月号」取材時のものです