人の家や暮らしを見るのって楽しいですよね。日刊Sumaiの読者なら、その思いはひとしおのはず。ビックリするようなカタチの家、素敵なインテリアの家、マネしたくなるようなアイデアのある家などなどなど。日刊Sumaiでは、住宅雑誌「住まいの設計」、マンションリノベ専門誌「リライフプラス」から、選りすぐりの家をピックアップしてご紹介していきます。

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要望は、景色を楽しみながら、家事や仕事を効率よく行える家リビングには薪ストーブと掘りごたつも

要望は、景色を楽しみながら、家事や仕事を効率よく行える家

南アルプスを望む長野県飯田市。老朽化が激しい家を建て替えるにあたってMさん夫婦が考えたのは、「この雄大な景色を楽しみながら、家事や仕事を効率よく行える家にしたい」ということだったそうです。
そんなとき親戚から紹介されたのが神戸の草屋根建築家・前田由利さん。草屋根とは、屋根や軒のうえに土をかぶせ緑化を施した、まるで地面のように使える設計手法のことなんです。
今まで草屋根のことは知らなかったというMさんですが、前田さんの提案に驚いたにも関わらず「それで暮らしが楽しくなるなら」と草屋根案を採用したんですって。園芸農家を営むMさんは、もとより土のプロ。土づくりから芝、花や野菜の植え付けまで、すべて自分たちで手掛けたでそうです。
高所恐怖症だったという奥さまも、今では草屋根のうえでの作業もお手のもの。

広い庭もあるのに、わざわざ屋根まで草屋根に!

この屋根には様々な草花や野菜が植えられています。「夏はそうめんをゆでている間に大葉とネギを採りに行ったり。焼肉のときはサンチュが役立ちますよ」とか。またここには、たくさんの鳥や虫が訪れます。

訪れたの夏の盛り。太陽をふんだんに浴びて、味が凝縮された野菜の数々が成っていました

鳥が運んでくる種で、植えた覚えのない花や野菜が育っていることも。なんとも楽しいキッチンガーデンができあがりました。

取材にお邪魔した日には、地元産と屋根でとれた野菜がたっぷり入ったゴージャスカレーをご馳走になりました。

カレーはおいしいし、野菜は新鮮だしサイコー!です。

リビングには薪ストーブと掘りごたつも

この家の特徴は草屋根だけではありません。暮らすうえでの心地よさの仕掛けがあちらこちらにちりばめられているのです。高台に建てられたMさんの家。その立地を生かし、素晴らしい眺望を楽しめるよう計算された位置に付けられた木製サッシもそのひとつ。

2階のこの窓からは雄大な景色が望めるし、そこから草屋根にも出られてしまします。前田さんいわく「ハイジの気分を味わえますよ」。

信州の雄大な景色が一望できる窓。両開きの窓がいい雰囲気

吹き抜けを設けた大きなリビングには薪ストーブと掘りごたつを設置しました。信州の冬には炬燵が欠かせませんよね。「薪ストーブで家全体が暖まり、厳冬でもストーブで温めたあんかを使用するのみ。ピザも焼けるし、とっても便利なストーブです」と奥さまも大満足だとか。

大きな吹き抜けのあるLDK。薪ストーブの暖気が2階まで温めてくれます

和室には、以前の家で使われていたよし戸を再利用しました。冬には襖に模様替えします。昔ながらの日本の住宅の知恵も取り入れているんですね。写真には写っていませんが、広めの月見縁も設けられています。家と外の間の空間も楽しむ知恵なんですよ。

よし戸は夏の仕様、秋からは襖に衣替えします

寝室の障子がちょっと変わっていますよね。こちらは名付けて「空見障子」。雪見障子は下段の障子部分が上に上がる仕掛けなのですが、「空見障子」は上の段を下に下げて、空が見えるようになっているんです。室内に寒気を流れ込ませず、外ともつながれる工夫です。寒さの厳しい地域の知恵なんですね。

雪見障子ならぬ空見障子。ワンちゃんもベッドのうえで気持ちよさそう!

草屋根と眺望を楽しむ家は自然の恵みを生かし、また自然に寄り添いながらも快適さを失わない家でした。みなさんも、家をつくる際には参考にしてみてくださいね。

設計=前田由利
撮影=キッチンミノル
※情報は「住まいの設計」取材時のものです