――最近ではYouTubeを観ながら自宅でエクササイズを始める方もいますよね。こういった運動の注意点はありますか?

中野さん

:YouTube動画での運動は気軽にできてとてもよいと思うのですが、その反面、発信する方が運動指導の専門家ではない場合、マネして同じ動きをするのはおすすめできません。
よくあるのが、モデルさんやタレントさん、ダンサーなどが伝えるワークアウトです。体の構造や可動を踏まえると、角度がずれていたり同じ動きを繰り返しすぎていたりする場合もあり、万人に提供するプログラムとしてはとても危険に感じるものもあります。

――動画での運動は危険もあるということでしょうか。

中野さん

:そうですね。40代以降は若いときより体も壊れやすくなっていますので、自己流は体を痛める原因になります。以前クライアントさんで、腰振りダンスでやせた主婦の方のレッスンを受け、股関節を痛めたり靭帯を切ったりした方がいらっしゃいました。これは運動の専門家から見れば壊して当然な動作の繰り返しをしていました。関節には動かし続けると弱い方向があり、過剰に繰り返すと関節がダメージを受け、壊れる原因になるからです。

YouTubeではいろいろなワークアウトが発信されていますが、情報の信憑性は問われていない状況です。股関節や靭帯を切った、ヘルニアを併発させたなどの声はよく聞きますので、素人の発信するワークアウトで運動するのは、気をつけていただきたいところです。

●下半身をとにかく強化。腹筋は後回しでOK

――最後に、今回は自宅や自分でできる運動を中心にお話をうかがいました。読者のなかには、運動を習慣化させるためにジムの活用を考える方もいると思います。その場合、トレーニングはどういった点に気をつけたらよいか、教えてください。

中野さん

:トレーニングは下半身を中心におこなってください。体を鍛える際、大筋群を動かしてあげることが、効率的な体づくりのポイントです。人には下半身(お尻を含む下肢)、胸、背中の順番で大きな筋肉がついています。このなかに、筋トレの代表的なイメージにもなっている腹筋は入っていません。筋肉量を増やしたりおなかの脂肪を落としたりしたくて運動するのであれば腹筋運動を優先するのではなく、下半身のトレーニングを中心におこなっていくのがよいでしょう。

またランニングをしている方は、走ることで下半身の運動になっていますので、筋トレをする際は胸や背中をおこなえば大丈夫です。このように自分の体をどうしたいか、どんな運動を組み合わせるかでトレーニングも異なっていきます。まずは運動をイベントにするのではなく、習慣化することを目指してください。筋肉は年齢が上がっても、時間こそかかりますが必ずつくものです。

私の103歳の祖母も、98歳で筋トレを始めて今もスクワットなどをこなしています。非常事態だからと体の変化から目を背けるのではなく、いつまでも健康な体と心を保つために、今できることから始めていただければと思います。