他人への「怒り」や自分への「ダメ出し」にとらわれて、息苦しさを感じることはありませんか? 過剰に感じたり、逆に我慢したりすることは、メンタルに悪影響を及ぼします。
うつ専門メンタルコーチの川本義巳さんに、対処法について教えてもらいました。

机に握りこぶし
「怒り」と「ダメ出し」に対処するには
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「怒り」と「ダメ出し」に振り回されず、適切に対処するために

私たちが日常的に感じていることの中で、あまり好ましくない感情と思考があります。
それが「怒り」という感情と、「自分はダメだ」という「ダメ出し」思考です。

●「怒り」と「ダメ出し」が苦しい理由

「怒り」という感情は、それをそのまま爆発させると、他人に暴言を吐いてしまったり、キツイ態度に出てしまったりします。最悪「危害を加えてしまう」ということもないわけではありません。こうなると後悔先に立たずで、後々苦しむ結果にもなりかねないです。
かといって、「怒り」をずっとガマンしていると、火山の噴火口にフタをするようなものですから、自分自身の心を痛め続ける結果になります。

また「ダメ出し」という思考も、それが続いてしまうと、「自分は無力だ」ということを学習してしまうので、常に「どうせ無理だ」と考えるクセがついてしまいます。こうなると、行動したくてもできなくなったり、夢を抱いてもすぐに「無理だ」と消してしまうので、徐々に夢を抱いたりすることもできなくなっていきます。
私は仕事柄うつ状態の人と接することが多いのですが、うつ状態の人は「自分はダメだ」を何度もやってきている傾向がありました。

●感じること自体は悪いことではない

怒りもダメ出しもやっぱり頻度が多いと、メンタル的には結構厳しくなります。
でも「感じなくする」というのはかなり難しいですね。私自身、心の勉強をずっとしてきていますが、未だに怒りますしダメ出しをします。むしろ以前よりも多いかも知れません。
それだけ自分の感情や思考に素直になってきてるのかな? と前向きに思っています。

●「怒り」と「ダメ出し」に適切に対処する

私は怒りますし、ダメ出しもします。でも困ってはいないです。もちろんそのことでだれかに迷惑をかけることもありません。
なぜそうなっているのか? というと、怒りやダメ出しを適切に対処しているからなんです。結構簡単な方法なので、ぜひやってみてください。

1.「怒り」の対処方法

「喜怒哀楽」という言葉があるように、人間にとって怒りという感情は「あって当たり前」な物です。この怒りのおかげで、色んな発明ができたり、制度ができたり、あるいは自分ががんばれるきっかけになったりもするので、怒り自体が悪いというわけでもありません。
ただ、怒りの感情に振り回されると先ほども言ったように、よくない結果に終わります。

感情や思考は二次的なものです。必ずきっかけになった出来事があります。
なにかを見たり、聞いたり、感じたりしたとき、ほぼ瞬間的に感情が生まれまるのですが、あまりにも瞬間的に起こるために二次的であることを感じていないんですよね。

そこで私は怒りの感情が生まれたときに、「あ。今『嫌だ』と感じたんだ」「あ。今『ムカつく』って感じたんだ」と思うようにしています。こうすると、感情が二次的なものであるということに気づけるので、そのまま感情に振り回されることがありません。

少し冷めるというか、客観的になるんですね。アンガーマネージメントで「怒りが生まれたら6秒待つ」という方法がありますが、あれも冷静になったり客観的になることで、怒りの感情をコントロールしているわけです。

2.「ダメ出し」の対処方法

次にダメ出しの対処方法です。人はメンタルがトラブってしまうと「すべてひとまとめ」にしてしまう傾向があります。たとえば「無理だ」と言えば、なにもかもができない感覚になりますし、「ダメだ」と言えば、すべてダメに感じてしまいます。

実際には、できることもあればできないこともあるし、ダメなこともあればいいこともあるのですが、ひとまとめになった状態ではなかなかいい方向には考えられません。

そこで私がやっているのが「かもしれない」という言葉をつけ加えるというやり方です。
「もうダメだ。かもしれない」「できない。かもしれない」こんな感じで「かもしれない」をつけ加えるだけで、少し思考が緩くなっていきます。

●日常的な習慣にしていくことが大事

今回紹介した方法は、これをやれば画期的に結果が出るというものではありません。
でも、日常的な習慣というのはとてもパワフルですし、この2つの方法は負担が少ないので、やりやすく習慣化されやすいです。結局は感情も思考も日常的なものですから、習慣化で対処した方がうまく行きますよ。