老後の2000万円問題が話題になりました。30代、40代の私たちの老後は、公的年金だけでは不足するのではという心配も。
「対策次第では金融資産の枯渇を防ぐこともできるんですよ」と語るのは、葬儀サービス会社役員でファイナンシャルプランナー(FP)の資格を持つ秋山芳生さん。
30~40代から考えておきたい老後資産形成の取り組み方を聞いてみました。
親・自分・子どもの3世代で話し合いたい「老後のお金」のこと
終活において、お金の問題は切っても切り離せないもの。介護や病気、お葬式など、人生の終盤はなにかと物入りです。
30代、40代の人にとっては、自分の老後より先にやってくる親の老後のお金が気になるところ。
●30代、40代のプレ終活。親の老後と子どもの未来も一緒に考えよう
病気やケガなど、85歳を超える高齢者の半数以上が、介護を必要とする状態になると言われています(※)。
※社会保障人口問題研究所 将来人口推計及び介護給付費実態調査(平成24年11月審査分)
「10年後、20年後、30年後…と区切って『親の介護と終活』、『自分の老後と終活』、『子どもの将来』を考えてみましょう。子どもが受験や進学などのイベントを迎えるとき、自分たちの親が何歳になっていて、どんな暮らしを送っているか話し合っておけるといいですね。きちんと準備をしておかないと、思わぬ出費が現役世代の私たちの生活を直撃することにもなりかねません」と秋山さん。
●介護費用の平均は約494万円!
心身の状態や介護の内容によっても異なりますが、介護の期間は平均で54.5か月(4年と6.5か月)といわれており、費用の平均も約494万円と高額です(※)。
※出典:生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」
※公的介護保険サービスの自己負担費用を含む
いざ親の介護がスタートした場合、在宅介護の場合でも、バリアフリー工事をしたり、介護用ベッドを購入したりと、一時的な費用に約69万円かかると言われています(※)。
※出典:生命保険文化センター「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」
※公的介護保険サービスの自己負担費用を含む
「介護老人福祉施設は、費用面では月額8~14万円とリーズナブルですが希望者が多く、3年待ちなどもザラに起こります。要介護3以上が優先されるため、有料老人ホームへの入居をする人もいます。しかしこちらは費用がまちまちで、初期費用に数千万以上かかるような高額なところもあれば、入居時費用はかからず月に13万円代のところも」(秋山さん)
親の生活状態に合わせて、適切な施設の選択や入居手続きを行い、療養に関するサポートをしていくときにも、本人の希望をより詳しく聞いておけると慌てずにすみそう。
●親の財産管理。本人の意向をどうやって反映するか?
親の老後をとりまく環境は、介護のみならず、贈与や相続、葬儀といったお金の部分も重要です。
・どのような人生の締めくくりを希望しているのか
・お葬式にだれを呼んでほしいのか
・親の預貯金や不動産などの財産管理
・老後の住まい
これらの希望を聞き取り、相続などでもめないように一緒にエンディングノートを書き始めるのも有効です。
また認知症になる前であれば、成年後見人制度や家族信託という方法も。
●30代、40代も注目!2022年の年金制度改正で長生きするほどお得に!
年金制度が改定され、2年ほど先から年金のもらい方も変わっていきます。
現在は65歳から年金を受給するのが基準となり、70歳まで繰り下げ受給をすることができます。
この繰り下げ期間が、今回の年金改定によって2022年からは75歳まで繰り下げることができます。
繰り下げ受給は「65歳を超えてから1か月年金をもらうのを後にする(繰り下げる)と、後にした月数に応じて、0.7%年金受給額が増えていく」という制度なので、長生きをする場合はトクになっていきます。
では、65歳から年金受給開始するのと、70歳から年金受給開始した場合、そして75歳から年金受給した場合では、それぞれ何歳まで長生きした場合に得するのでしょうか。
【70歳から年金受給した人の場合】
65歳で年金受給開始と比べ、81歳を超えて長生きするとトクします。
【75歳から年金受給開始した場合】
70歳で年金受給開始と比べ、86歳を超えて長生きするとトクします。
男性は平均寿命が82歳なのに対し、女性は87歳を超えており、今回の年金改定は長生き女性にとっては有用な変更と言えるかもしれません。
「親の老後は、健康状態や家庭の財政状況に応じて、ベストな受給タイミングを早めに話し合っておきましょう」と秋山さん。
●年金だけに頼るのではなく、NISAや確定拠出型年金などを活用していこう
つみたてNISAや確定拠出型年金などをうまく併用することで、老後の年金受給開始を遅らせるのも有効です。
「60歳~65歳の5年間をつみたてNISAで“先発”させて、65歳~70歳の5年は確定拠出型年金で“中継ぎ”をさせる。そして金額がUPした年金を“おさえ”として、70歳から受給し始められるように、支出額にあわせた資産形成を計画的に使うことも有効です」と秋山さん。
●現役世代は、元気に長く働けるスキルを身につけよう!
30代、40代の働き盛りの人たちは、教育・労働・引退をフレキシブルに繰り返しながら、老後まで長く働き続けるスタイルも増えそうです。
「時間を切り売りしてハードワークするのではなく、自分の資産を増やしてくれるような副業を若いうちからはじめておくのがおすすめです」(秋山さん)
自分の得意分野で仕事をする「インディペンデント・プロデューサー」や、複数の職業・収入源を持つ「ポートフォリオワーカー」を意識しながら、新しいライフワークバランスを整えていくと老後の強みになります。
●子どもに資産を残せる「ジュニアNISA」もルールが変わった!
もうひとつ、子育て世代が着目したいのがジュニアNISAです。年間80万円を親が子どものために積み立てることができる制度で運用益が非課税なのですが、子どもが18歳になるまで引き出せないというデメリットが大きく、使いづらい制度で評判はイマイチ。
でもこのルール、じつは今年から変わったのをご存知でしょうか。
「ジュニアNISAは、不人気なので2023年末で終了が決定してしまいました。しかし同時に、24年以降はいつでも運用をやめることができるようになったので、解約もできる、非課税制度の魅力的なしくみに生まれ変わったと言えます」と、秋山さん。
今から始めるなら最大80万円×4年=320万円を、運用状態がよいタイミングで途中解約して学費に充てることも。
学費にしなくても、ジュニアNISAを子どもが20歳になったら普通の証券口座に移管して運用すれば、子どもの将来のお金として有用感がUPします。
未来を見据え今なにをすべきか、具体的な事前準備をしていくことが、残された家族への負担も減らすことにもつながります。30代、40代のうちからプレ終活を始めることで、人生設計もよりクリアに描いていけそうですね。