女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地でありその後も定期的に訪れるスウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は、中学校の同窓会への参加で感じた思いを語ります。

猫とフィーカ
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フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと

還暦世代の同窓会、忘れかけていた13歳の自分

川上麻衣子さん近影
川上麻衣子さん近影

還暦世代の同年代の方々には、共通する傾向だと思いますが、今年に入りやたらと同窓会が増えています。それも小学校や中学校という40年も50年も昔に過ごした仲間たちとの再会です。

かくいう私の元にも続々と案内が届き始め、先日は中学1年生のクラス会が催され参加をしてきたところです。

中学1年生の川上麻衣子さん
14歳でのデビュー前、中学1年生の頃

思いのほか遠い記憶となっていた中学1年生。13歳の自分を思い出すのは難しく、思い出の中でもワサワサとした記憶の中に紛れていました。

それでも6年間、慣れ親しんだ小学校での生活から少しだけ大人の世界に足を踏み入れたような緊張感だけは不思議と蘇ります。

私の場合、14歳で『3年B組金八先生』というドラマに出演してから人生が大きくうねりだした感覚がありました。今思うと、まだその気配がまったくなかったその時代は、特別に愛しく感じられます。

懐かしさが勝った同窓会への参加

15歳頃の川上麻衣子さん
『3年B組金八先生』に出演していた15歳頃

同窓会には父兄会の出席者が群を抜いて多かったという、母親たちに絶大な人気だった担任の先生も参加してくださるとのこと。

案内が届いた当初は、なんとなく照れくさい気持ちや、その場に行っても浮いてしまうのではないかという不安から躊躇(ちゅうちょ)がありましたが、結局は懐かしい気持ちが勝り参加することとしました。

同窓会の数か月前には連絡網よろしく、同窓生だけでつくられたグループラインに20名を超える仲間が集まりました。

うろ覚えの苗字に古いアルバムを引っ張り出しては記憶を辿るのですが、思い出される事柄が驚くほど断片的で、時の流れを実感せざるを得ません。

ほとんどの女子はアカウント名に(旧姓)の表記があり、「彼女もあの彼女も結婚したんだ…」などと感慨深くなったりもします。

町田で級友たちに47年振りの再会。みんなの変化は?

川上麻衣子さん近影
最近の髪色。白髪がいい感じに混ざり合ってきました

同窓会当日。会場は皆が通った校舎の近く、町田駅からすぐの場所で開催されました。

町田駅といえば、少し前に売却した実家があった場所です。50年近くも前によく買い物をしたお気に入りの通りは、時代を経て様変わりをしていました。そんな中、わずかに名残を残している場所もあり、かえってそのことに感激しながら会場に向かいました。

何十年ぶりに会う同窓生との再会は、やはり懐かしさから話が尽きることはありません。女子はほとんど当時の面影を残していて、それこそ、グレーヘアに移行した仲間も何人かいました。

私自身、2年前の秋頃から白髪染めをやめて、グレーへアへの移行に挑戦し、現在様子見中。自然な髪色にした友人たちに老け込んだ印象がないことが、うれしく勇気づけられもしました。

おもしろいことにグレーヘアを受け入れている彼女たちは、中学生の頃から個性的でマイペース派だった気がします。あまり群れるタイプではなく意志がしっかりした印象がありました。「おー、彼女もこっち派なんだ」などと急に親しみがわいてきたりします。

一方男子は、先生より年上に思える貫禄を醸し出している人もあり、当時からは想像がつかないほど身長が伸びていたり、声変わりもしています。名前を聞いても結びつかず、そのことだけでも大いに盛り上がりました。

「老ける」のとは違う「深み」にしみじみ

小学生の頃の無邪気さが抜けて、ほんの少し気取り気が出始めた中学1年生。あの頃はきっとだれもが、予測できない未来に期待と不安を織り交ぜながら虚勢を張っていた気もします。

47年を経て再会した同窓生を見ていると、どの顔にも当時の気負いはなく、それぞれに人生を刻んできた深みが表情に表れていました。

「老ける」のとは違う「深み」。

このとき、私が常日頃から「若さ」に固執する気持ちになれない理由が分かった気がしました。「若い」という言葉には、当時の自分自身にたしかにあった「浅はか」さが感じられるからだったんだ、と。

「あの頃に戻りたい?」への答えは…

10代の未熟な頃に、我の強さから浅はかな行動やジレンマに苦しんだことは、その若さゆえ。早く大人になりたいと強く願っていた私がいます。

思い出話の合間に「あの頃に戻りたい?」と聞かれ、その場にいただれもが「やだー」と答えたのは、みな「今」をしっかりと生きている証なのかもしれません。

会話を重ねるほどに思い出されてくるあの頃と比べてみて、だれもが圧倒的に今の方がすてきだと確信できた同窓会。

「私たちもいい年になったのね」と微笑む姿をあの頃の私に見せてあげたくなりました。

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