「断捨離」という片づけメソッドを生み出し、その効果を広く伝えているやましたひでこさん。ものを手放すことを通じて、年齢にとらわれない、自由な生き方も手に入ると話します。70代を迎えたやましたさんの、新たな課題と目標についてうかがいました。

一般財団法人「断捨離」代表、やましたひでこさん
一般財団法人「断捨離」代表、やましたひでこさん
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どんなにお気に入りのものでも、「いつかは手放す」と考える

不要なものを手放すとともに、ものへの執着心をなくす「断捨離」を提唱してきたやましたひでこさん。ご自身の暮らしも常にアップデートを続け、手元に残すのは本当に必要で気に入っているものだけ。けれども、それらの厳選されたものたちもいずれは手放す可能性があると考えているそう。

「これだけは捨てない、と決めているものはひとつもありません。お気に入りのアンティーク家具やオブジェも、不要になるときが来たら誰かに引き取ってもらうつもり。今は私が持っているけど、ずっと抱え込み続ける必要はないと思っているので。一般的に、続けることは『よいこと』とされていますが、ただ続けているだけでは、効果を得られなくなるときが必ず来るんです。たとえばヨガも、初心者のほうが効果を劇的に感じられますよね。でも同じやり方を続けていると、いずれ最初のような刺激は感じられなくなってしまう。その都度やり方をアップデートし、違う刺激を与えていくことが本当の『続ける』ことなんです」

どうするべきか迷ったり、なにかに行き詰まったときは、「もの」に立ち返ることで状況が打開できることも。

「ものを捨てる行為は、『違和感を捨てる』ことでもあるんです。かつては気に入っていたけど今はしっくり来ないもの、置いてあると違和感を覚えるもの…。そうしたものを捨てていくうちに、いわゆる『モヤモヤ感』も一緒に消えていくんです」

新たな夢をかなえる行動力がわいてくるのも、「断捨離」の効果

やましたひでこさん

そうやってみずから断捨離を実践し、身軽な生き方を手に入れてきたやましたさんですが、まだまだ課題もあると話します。

「断捨離の『捨』はスムーズにできるけど、『断』、つまりオファーやお誘いを『断る』ことは、まだできないことも多いんですよね。捨てられないのは、『もったいない』『せっかく買ったのに』『いつか使うかも…』という、過去への執着や未来への淡い期待が原因。対して、『断つ』『断る』ができないのは、一度断ったらもう二度とチャンスが来ないんじゃないか…と恐れているから。それに加えて、『せっかくのお誘いを断るなんて、私なんかが偉そうじゃないかしら…?』という申し訳なさもありますよね」

その「恐れと申し訳なさ」は、やましたさん自身にとってもハードルとなっているそう。

「やっぱり、『いい人と思われたい』という気持ちは誰にでもありますよね? でも時間には限りがあるから、予定を詰め込みすぎるとどんどん自分が追い込まれてしまう。キャパオーバーになった結果、家が散らかったり、体調を崩してしまったり…といろんな不具合が生じてしまいます。ただ、断らずにオファーを受けたことで、成長できる場合もありますよね。キャパオーバーにならないよう、自分にとってベストなバランスを模索していくことが大切なんです」