海外のオシャレなインテリアを見て「ステキ」と思うものの、なかなか日本の家に取り入れるのは難しいことも。イタリア人の夫と2人の子どもとイタリアに15年住み、noteやXでイタリアの暮らしを綴ったイラストエッセイが話題のイラストレーター・マンガ家のワダシノブさんは、招かれた家のインテリアを見て日本との収納事情の違いを感じたそう。その違いについて教えてくれました。
すべての画像を見る(全6枚)イタリア人の家はオシャレなうえに居心地がいい
日本にある私の実家は、家の中でいつもなにかがはみ出している状態だった。その後実家を離れ、夫と暮らし始めた日本のアパートでも、いつもものが収まりきらずにはみ出していた。ゴミ箱に、畳んだ洗濯物。こうしたものが視界の端にあることが当たり前だった。そして、清潔だけどオシャレではない家で育った私は、インテリアに興味を持たずに大人になった。
そんな私がオシャレインテリア国、イタリアに住むことになった。インテリアが好きな人にとって、イタリアは最高の場所だと思う。インテリアショップも多いし、なにより家に人を招いて、部屋を見せることが好きな人がたくさんいるからだ。
私も住み始めた当初は、だれかの部屋に行っては「ステキ!」と興奮していた。褒めるとたいていの人が「もっと見たい?」と、まるで『VOGUE』のルームツアー動画のように、次々と部屋を見せてくれるのだ。
そうやって見せてもらった部屋は、オシャレなうえに居心地がよい場合が多かった。常になにかがはみ出した部屋で暮らしてきた私は、見られて困る場所がない人が多いことに驚いた。そして、次第に「自分の家ももっとステキにしたい」と思い始めたのだ。
ものを捨てても居心地のよさは手に入らなかった
ステキな家への第一歩として、「家の中ではみ出しているものを捨てよう」と思い、まずははみ出したものを片づけて空間をつくることにした。そして、できたスペースにほんの少しの厳選されたものを置こうと思った。
ものを捨てれば捨てるほど、部屋はすっきりしていった。ただ、残念なことになかなか思うようにいかなかった。すっきりしてはいるけれど、居心地のよい部屋ではないのだ。部屋をステキにするために、見た目はイマイチだけど便利なものを捨てて、見た目のいい不便なものを使うことにもイライラし始めた。
そして、ここでやっと気づいた。イタリアの人はあまりものを捨てないということに。思い返してみれば、イタリア人の夫も友人も、ものを捨てずにとっておくことが多い。ただそれを、見えるところに出さないだけなのだ。