子育てや仕事がひと段落して、これからの人生を自分らしく前向きに過ごすためにどうしたらいいか、迷うことが多い60代。舞台『太鼓たたいて笛ふいて』で主演を務める大竹しのぶさんさんも現在67歳。そこで今回は、大竹さんに、作品にかける思いや、いつまでもしなやかな感性を保つ日々の心がけについて伺いました。

大竹しのぶさん
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日々の生活がどれだけ大事か、今だからこそ伝えたい

『放浪記』などで知られる作家、林芙美子の評伝劇『太鼓たたいて笛ふいて』で主演を務める大竹しのぶさん。初演の2002年から再演を重ね、今回は10年ぶり、5回目となる上演です。

「初演のときは、井上(ひさし)さんが書いてくださったすばらしい戯曲を通じて、井上さんの言葉を、役者として伝えられる喜びを日々感じていました。そのときも精一杯演じていましたが、すばらしい作品というのはやればやるほど、『もっとこうしよう』という思いがわいてくるんですよね。

10年ぶりに演じるにあたって、自分の変化以上に、世界の変化を感じています。もちろん、これまでも世界中で戦争は起きていたわけですが、さまざまな出来事を目の当たりにして、その危機感がより強まっている今だからこそ、あらためて上演する意義を感じています」(大竹さん、以下同)

本作では、戦中、従軍記者として戦意発揚に協力し、後半生はそれを悔いて、命を削るほどの熱心さで市井の人々の暮らしを書き続けた芙美子の姿が描かれます。

「『はるかかなたどこかで…』と始まる幕開きの歌、考えてみたらこわい歌詞ですよね。太鼓や笛の音が鳴って、リズミカルなメロディで『あれは祭りの笛か、いくさの合図なのか』と歌われて…。劇中、芙美子が、戦争を賛美していた自分を責め、日々の生活がどれだけ大事かを言葉にしなくちゃいけない、と語る場面があります。それを、今、本当に伝えたいんです」