たっぷり収納があることを魅力的に感じる人もいるかもしれません。でも、その収納が物置きと化してしまったら…もったいないですよね。そんなことにならないためにも、「収納スペースより、今あるもの量の見直しを」と進めてくれたのは、『家は南向きじゃなくていい』(講談社刊)の著者で、2000軒以上の家を設計してきた一級建築士の内山里江さんです。
すべての画像を見る(全2枚)目的もなく収納をつくってしまうと物置きと化してしまう
内山さんは家を設計する際、多くの方から、「収納スペースをたくさんつくってほしい」と言われるそう。それだけ収納の多さを求める人が多いと思います。
「私自身の経験ですが、二世帯住宅を建てたとき、屋根裏に6坪(約12畳)の大きさのスペースをつくりました。いつか子どもができたら子どもの部屋にしてもいいし、趣味の部屋にしてもいい。とにかく用途を決めず“なんとなく”つくってしまいました。ところが、このスペースは使うことなく、ただの物置きと化してしまたのです。
そこには、結婚式で使ったキャンドル、学生時代のアルバムや手紙、スポーツグッズ、なんと日焼けマシンまでありました。1坪あたりの建築単価は、坪60万から80万円が相場だとよく言われますが。400万円ほどかかって用意したスペースには、取り出すことのない不要品をたくさん詰め込んでしまうことになったのです」
このように、スペースがあればあるほど、ものを詰め込み、無駄にしてしまう人は多くいるそう。
「使わずに、物置きになっているだけの部屋にそれだけのお金がかかっていることに驚いてしまうはず。持ち家でも賃貸でもそこは同じです。この経験から私自身が思ったのは、なんとなくの収納は悪であるということ。目的を決めず、余分なスペースがあると、ものを突っ込んでしまいがちです。さらに奥まった場所にあると取り出すこともできません。これはもはや収納とは言えませんよね」
内山さんが提案するのは、「まずはものの量を見直してから、使いやすい収納スペースを考えること」だと言います。
収納スペースをつくるなら、持ち物の量に合わせた「適量」をつくる
「収納スペースがほしいと思ったとき、まずは余分なものを減らし、その家庭ごとの持ち物の量に合わせた適量を、使いやすい適所につくるといいでしょう。その人の持ち物の量の目安は、洋服の量を聞くとだいたい分かります。
最近の家は、家事動線をよくするために、家族全員分のオールシーズンの洋服すべてを1か所にまとめて収納できるスペースをつくることです。ランドリースペース付近に設ければ家事もラクです。そこはウォークインクローゼットであり、そこで着替えもできます」
収納は、使ってこそ生かされると言います。
「最近喜ばれたのは、ウォークインクローゼットが欲しいというご夫婦の家を設計したときに、クローゼットの真ん中に可動式の棚を置きました。じつは、左からも右からもものを取ることができます。
可動式の棚は、安価な木材でつくりましたが、家具量販店で売っている棚でも、大差ありません。もちろん、メタル製のポールラックでも代用できます。このように日々の使いやすさも意識してつくるといいでしょう」
適切な収納が生活のクオリティを上げる
「適切なサイズの収納を適切な場所に用意すると、家事も日常生活も送りやすく、とても心地いい感覚を味わえるでしょう。その日に着たい服をさっと取り出せてすぐに着替えられるような環境は、日々の満足度に直結します。
このような適切な住環境をつくるためにも、その家や人によって収納スペースの適切サイズ感を把握することは欠かせないことです」
これから引っ越しをする際や、よりよい家づくりをしたい考えいている人には、「3年以上着ていない・使っていないものは持ち込まないこと」と伝えていると言います。
暮らしの満足度を上げるためにも、ぜひ今の持ち物の適用量を見直してみてはいかがでしょうか。