人生を楽しむのが得意と言われるフランス人。更年期障害の辛さを女性たちはどのように乗り越えるのでしょうか。フランス文化研究者・翻訳家のペレ信子さんが、現地の更年期障害事情をレポートします。

柑橘類
元気が出る色の柑橘類たち
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「なるべく自然に過ごしたい」という想い

フランスの街並み

ホットフラッシュ、不眠、イライラや疲労感。日本人同様、フランス人女性も更年期のこんな症状に悩んでいます。

病院に行けば、ホルモン製剤を処方されることもあるのですが、私の周りのフランス人やメディアで見かける有名人がホルモン製剤を積極的に取り入れたいと言っているのを筆者はあまり聞きません。

その理由としてよく挙げられるのが、若いときからフランス人女性が使うピル(経口避妊薬)です。フランスでは1970年代にピルが一般に普及し、現在は25歳になるまでピルが無料で手に入ります。高校生の女の子がお母さんに連れられて婦人科を訪れ、ピルを無料で手に入れていることを知って、最初はびっくりしました。

高校生からピルを飲んで数十年。更年期になってから、再び長期間ピルを飲むのことがよいのか自問する人もいて、ホルモン製剤を積極的に取り入れようとは思わないようです。

ハーブやアロマ、おばあちゃんの知恵に頼る

フランスの家

では代わりに、更年期の不快な症状をどう乗り越えるのか? フランス人の友達に更年期の不快な症状をどのように乗り越えているか質問すると、ホルモン製剤の代わりに、ハーブティーやアロマテラピーなどの自然からの優しい作用に期待するという返事が多数ありました。

だれでもインターネットで簡単に調べられる時代に、情報に敏感になった結果でしょうか。

結局、おばあちゃんの知恵のような昔からの習慣に頼る人も多いようです。一般的によく利用されているのがレモンバームやセージなどを、湯に浸してつくるハーブティー。また冷たいシャワーを浴びるというのもよく聞きます。

心と体に優しい「伝統的な家庭料理」のよさを再認識

伝統料理

バランスを崩した体を整えるのに、スポーツをしたりリラックスする時間をつくったりするのがよいとよく言われます。その一方で、昔ながらの食材(野菜、豆類、ハーブなど)や昔ながらの伝統料理のよさも見直されているようです。

たとえば、おばあちゃん料理のプロポ(Poule au pot/鶏もも肉の水炊き)や野菜や肉を長時間煮込んでつくるブイヨン、地方の伝統煮込み料理などです。

そして新しい食材にも注目が集まっている模様。私たち日本人にはおなじみ、味噌や豆腐などに使われる大豆がその筆頭。海藻やスプラウトのような発芽野菜も、更年期にも体にもよいと言われて食卓に上がるようになってきたそうです。

ナチュラルに心と体に優しい方法で乗り切る

上記に紹介したような対応策は、効き目がすぐ出るようなものではありません。それを理解しつつ「そもそも、更年期は自然の流れに沿ったもの」と受け止めて、心と体に優しい方法をとる人が多いようです。サルコジ元大統領夫人のカーラ・ブルーニがインタビューで「更年期は思春期の熟成版」と言っているのを聞いて、なるほどと思いました。

 

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