作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。子どもたちと触れ合うなかで感じた、時間のスピード感についてつづってくれました。

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暮らしっく
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もう2月が終わってしまう。ついこの間確定申告を終えたと思っていたら、また確定申告の季節がやってきてしまった。なんなんだ、このスピード感。

10年前、「40過ぎたら速いよー」と、先輩たちが口をそろえて言っていたけど、本当に速いんですねえ。

子どもの頃は一日がものすごく長かった。授業の一コマも、たった10分の休み時間も、今とは明らかに時間のスピードが違っていた。

「毎日を大切に生きていたからでは?」と言われたら、むしろ今の方がその意識は高い気がする。ごはんだって、服だって、旅だって、時間に限りがあることを知ってからの方が、自分で選び生きることをしてきた。

それに、子どもの頃が自由だったかといわれたら、そうでもない。朝早く起きて2キロの山道を歩いて学校へ行くのは寒い日は辛かったし、給食は大好きだったけど自分で選べるわけではなかったし、運動会や音楽会、卒業式の練習、決まり事ばかりで、選んでなにかをする機会は今よりずっと少なかった。

それでも、一日はとても長く新鮮だった。

子どもと大人の時間間隔

雪だるま
子どもたちがつくった雪だるま

子どもは大人の時間感覚の6倍長く感じているというのは、どこかで聞いたことがあるかもしれない。「ジャネーの法則」(時間の心理的長さは年齢に反比例するというもの)といって、19世紀のフランスの哲学者ポール・ジャネーが考え出した法則だ。私は今41歳なので、私の1年間は41分の1ということになる。つまりこれまで生きてきた人生の2.5%でしかないということのようだ。

これが6歳の甥っ子の1年だと6分の1となり、彼の一年は人生の17%くらいを占めることになる。ということは…甥っ子の1年は私の1年の6倍の時間感覚ということになる。

子どもの頃はもっと一日が長かったのになという感覚、この法則だと合点がいく。ひえー!

このスピード感をもう止めることはできないのだろうか。なんとかしてもう少しゆっくりにしたいのです。