芸人として活躍する一方、大阪市淀川区で、小・中学生向けの格安学習塾「寺子屋こやや」を運営する漫才コンビ・笑い飯の哲夫さん。子育てに悩む親たちへ、ゆるくやさしく、ときに厳しいアドバイスをまとめた著書『がんばらない教育』(扶桑社刊)が、話題を集めています。そんな哲夫さんに、読者の実際のお悩みに回答してもらいました。

相談者「受験に失敗した子どもに親ができることとは?」

中学受験を経験した息子は、ほぼ合格圏内と言われていたにもかかわらず、第1志望、第2志望の合格に不合格。緊張しやすい性格が災いしたのか、もともと希望していた学校よりもだいぶ偏差値の低い学校に行くことになりました。

テストの成績がよくても「どうせ滑り止めの学校だったし、周りのレベルが低いだけだよね…」という発言をいまだにすることがあり、受験の失敗を今も引きずっているように見えます。親としては、精一杯努力したうえでの結果を受け止めているし、息子にも気持ちを切り替えて学校生活を楽しんでほしいと思っています。ただ、このような心持ちでは、友達関係もうまくいかないのではと心配です。

今思えば、私や夫が無意識のうちに、子どもに「少しでも偏差値の高い学校に行くことが正義」という価値観を植えこんでしまったのかもしれません。息子に前向きな気持ちで学校生活を楽しんでもらうにはどうしたらいいと思いますか?

(相談者/44歳女性・会社員)

哲夫さんの回答「子どもが落ち込むのは、親の“がっかり感”が伝染している可能性も」

哲夫さん
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哲夫:失敗したり落ち込んだりしたなかでも、絶対に褒められるポイントはある。問題は、親がそこを見つける作業ができるかということ。単純に子どもの“伸び率”や“成長”を褒めてあげてください。

それと、これは僕の持論なんですが、テストや受験において大切なことは、結果だけではなくて、テストのためにどれだけ必死になれたかということだと思うんです。失敗しても、挑戦したことはきっと子どもにとって糧になりますから。

――お子さんの中には、自分では前を向きたくても、どこかで親の顔色を見てしまったり、「自分の失敗で親を悲しませた」といつまでも前を向けない子どももいるかもしれませんよね。

哲夫:それなんです。中学受験をする小学生ってね、もちろん自分の将来を考えてみずから「受験したい」って方向性を決めている子ももちろんいると思うんです。でも、多くはそこまで考えていないような気もするんですよ。もちろんこれは僕の考えですよ。

…なんか「親が喜ぶ顔が見たいから」「喜ばせたいから」っていうお子さんも多いというか。だからこそ、受験に失敗したときに、親から伝わる“がっかり感”をより敏感に受信してしまって、気分が落ち込んでしまう子どもも、結構いると思うんですよね。

受験する子ども
※写真はイメージです

あとは子どもに期待しすぎる。昔みたいに子どもが5人も10人もいるという時代だったら、単純に数の問題でどうしたって「あんた勝手にやっとき」って、結構放任になるものなんですよ。子どもの数だけ、親の意識が分散するから。

でも今は子どもの数が少ないから、どうしても親はときに過剰に子どもに意識が集中してしまう。そこが「子育てをがんばりすぎてませんか?」って僕が伝えたいところでもあるんですよ。親の思いが、子どもにとって心強くもあるんだけど、ときにプレッシャーになる。