ベネッセ教育総合研究所の調査によると、2002年以降、小学生が1日に宿題にかける時間は徐々に増え、2016年時点で平均約40分となっています。子どもに任せると終わらないので、親が毎日つきそってチェックしているという家庭も多いかもしれません。しかし「『宿題を必ず終わらせること』を生活の軸に置くのは、子どもの脳に悪影響です」と話すのは、『「発達障害」と間違われる子どもたち』などのベストセラーで知られる、小児科医・「子育て科学アクシス」代表の成田奈緒子先生です。

ここでは、近著『誤解だらけの子育て』において成田先生が解説する、「小学生の親が気をつけたい宿題と生活時間の関係」について説明していきます。

関連記事

親の「睡眠不足」が子どもに影響する。小児科医が百害あって一利なしと警鐘を鳴らす深い理由

「宿題は終わるまで親がつきそわなければいけない」という誤解

宿題をする子ども
小学生が1日に宿題にかける時間は徐々に増えていますが…(※画像はイメージです)
すべての画像を見る(全2枚)

子どもの成長になにより大切なのは「睡眠」。乳幼児期には午後8時までに寝ることを目標に、時間がない日は夕食を簡単にすませてもいいし、1日くらいお風呂に入らなくても構いません。

ところが小学生になると、この生活のルーティンに「宿題」が加わってきます。夕食やお風呂は時短することができても、宿題ばかりは子ども次第なので、ここにどうしても時間がかかってしまう、と悩んでいる親御さんも多いようです。

ベネッセ教育総合研究所が1998年から実施している「学習指導基本調査」によれば、ほとんどの学校で毎日宿題が出されており、2002年以降、小学生が1日に宿題にかける時間は徐々に増え、2016年時点で平均約40分となっています。

子どもに任せているといつまで経っても宿題が終わらないので、やり終えるまで親が見守り、つきそっているという話もよく聞きます。その場合、宿題が終わるまでは夕食の準備もできないので、夜寝る時間がどんどん遅くなってしまいます。

こうした「宿題を軸にした生活時間」のために、問題行動が収まらなくなっていたお子さんの例をご紹介しましょう。

●宿題を重視する生活をしたら、問題行動がかえって増えた

小学校4年生のAくんは、低学年の頃から「授業中に立ち歩いてしまう」「友だちに手を出す」「宿題をしてこない」「忘れ物が多い」などと指摘されることが多い子どもでした。

そこでお母さんはAくんの帰宅後、毎日次のルーティンで過ごすようにしたのです。

・帰宅後、ランドセルから宿題を出させ、お母さんがつきっきりで宿題をさせる。
・宿題が終わってから、やっとお母さんは夕食の支度を始める。
・宿題をがんばれば、寝るまでの間は自由にゲームをしてよい。
・満足するまでゲームをしたら入浴し、そして就寝。
・朝はギリギリまで寝かせておき、忘れ物がないよう、お母さんが学校の準備をする。

この生活をしばらく続けたところ、学校でのAくんの問題行動はかえってエスカレートしてしまい、家でもお母さんに暴言を吐いたり、暴れたりするようになってしまいました。

「とにかく宿題を終わらせること」を生活の真ん中に置いてしまったために、Aくんの夕食や寝る時間は流動的になってしまい、「からだの脳」と「おりこうさんの脳」「こころの脳」をつなぐセロトニン神経がうまく機能しなくなっていたのが原因でした。