増え続ける共働き世帯。2022年には6割を超えています。一方で「保育園に預けて働くのは、子どもにとってかわいそうなことだ」という考え方を、いまだに目にしたり、言われたりすることがあります。「これは現代の子育て世帯を、呪いのように根強く苦しめている誤解です」と話すのは、『「発達障害」と間違われる子どもたち』などのベストセラーで知られる、小児科医・「子育て科学アクシス」代表の成田奈緒子先生です。

ここでは成田先生の新刊『誤解だらけの子育て』(扶桑社刊)から、保育園に預けて働く親が気をつけたいことについて、抜粋して紹介します。

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「幼いうちから保育園に預けるのはかわいそう」という誤解

保育園に預ける
幼いうちから保育園に預けるのはかわいそうなのか?(※画像はイメージです)
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子育てをする家庭のうち、共働きの割合は年々増え、2022年には6割を超えています。お母さんだけでなくお父さんが育休を取得するケースも増えつつあり、早期に子どもを保育園に入れ、職場復帰をする人も珍しくなくなりました。

こうして、女性もだいぶ社会参画しやすくなってきたにもかかわらず、いまだに「そんなに小さいうちから、子どもを保育園に預けるなんてかわいそう」と考える人がいます。実際に実親や義理の親、あるいは近所の人などから言われた経験がある人もいるのではないでしょうか。

これは現代の子育て世帯を、呪いのように根強く苦しめている誤解です。

子どもは親の姿を見て、物事の認知の仕方を学んでいきます。「長時間、親元を離れて保育園で過ごさなければならないなんて、この子はかわいそう」と考えている親御さんと、「保育園の先生とお友だちのおかげで、この子は今日も1日、元気いっぱい過ごすことができる。私も思いっきり仕事ができる。なんてありがたいことだろう」と考えている親御さんのもととでは、どちらのほうが子どもの脳がよく育つでしょうか。

●保育園の送り迎えは絶好の機会

保育園の送り迎えは、親の「おかげさまで」「ありがとう」の姿勢を子どもの前で見せる絶好の機会です。

よく、保育園のお迎えの際に「ごめんね、お待たせ」と、子どもに申し訳なさそうに声をかける親御さんがいます。もちろん、突発的に発生した仕事などで通常のお迎え時間よりも大幅に遅くなってしまい、子どもを不安にさせてしまった場合に「ごめんなさい」と伝えることは問題ありません。

しかし、親御さんが仕事をしている間、子どもが保育園で過ごすことは「生活」であり、それ自体を謝る必要はないと考えます。それよりも、とびっきりの笑顔で「あなたが保育園で元気に過ごしてくれたから、今日もしっかり仕事ができたよ。ありがとうね」と伝えればよいのです。

親がポジティブに物事を捉え、いつもニコニコしていれば、子どもも笑顔の多い子に育ちます。保育士さんも人間なので、子どもたちの扱いに差をつけることはなくても、笑顔の多い子どものほうを、ごく自然に「かわいい」と感じるものです。

こうして、「おかげさまで」「ありがとう」という笑顔のコミュニケーションを見て育った子どもは、周囲からも愛され、社会に出てもうまくやっていくことができるようになるでしょう。