画廊と美術館での学芸員経験を持ち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らし。お金を極力使わない「ケチカロジー」という言葉を生み出し著書も上梓している小笠原さんは、極力ものをもたないように暮らしています。そんなもたない暮らしのなかでも、「自分がいいと思ったもの」だけを残すコツについて教えてもらいました。
すべての画像を見る(全7枚)「本当に好きなもの」だけを残すために大切にする3つのこと
節約などで暮らしをコンパクトにすることは、暮らしのスマート化でもあります。ただ、やみくもにものの数を減らすだけではなく、自分にとって「いいもの」「好きなもの」だけを残して暮らしていけるかが、カギになると思います。
インテリアや生活雑貨、洋服に至るまで、暮らしまわりでも無駄なものを持たず、お気に入りのものだけを厳選した暮らしは、とても豊かであると実感しています。
自分の好きなものを知るためには、世にある「いいもの」をたくさん見て、感性を磨くことが大切。今回はそんな感性の磨き方についてお伝えします。
●美しい生活雑貨から学ぶ
インテリア雑貨や器などを見て、その美しさに魅了されることも多いでしょう。とくに私の場合は、配色に惹かれます。全体のイメージを決めるのも配色ですが、そのよし悪しは、形とのバランスにもあります。
●他国のおしゃれにも学べる
他国のおしゃれも参考になります。たとえば、フランスのライフスタイルアドバイザーの、フランソワーズ・モレシャン氏は、日本に暮らしながら、おしゃれ文化について発信していて、ファンもとても多いです。
彼女の本には、「パリっ娘は日本の若い女性のように洋服をたくさんは持っておらず、その服がベージュやグレーなどの中間色が多いのは、自身の個性を引きたてることに重きを置いているから」と書かれていました。逆にビビットな色を主にした組み合わせは、自身の個性を潰しがちになり、周囲とのバランスにも不調和が起こしやすいそうです。
洗練さより民族性の色濃い地域の文化に惹かれてきた私は、パリ風エレガンスにマネるものはないと思いつつ、パリ風感性への意識は常にあったようです。そのことに気がついたのは、最近あるパリ巡りのYoutubeを連続視聴するようになってからです。パリ紹介のチャンネルの中でも、カメラワークや音響、わずかな会話や食事風景から品性のにじみ出ている作品で参考になっています。
だからと言って、「パリに学べ」ではありません。風土の違い、町の成り立ち、伝統的な色彩感覚などで、当然国々に違いはあり、優劣を問うものでもありません。ただ一例として、パリは近代の都市大改造で、街路の配備や建造物の高さも整えられ、建物のディテール(細かい部分)や色彩も、一種の完璧さで統一されたモデル都市です。
なかでも私が注目するのは、建物の扉や軒先テントの色。多種多彩ではありますが、くすんだ青や、渋いブルーグレーなど抑制のきいた色が目をひき、そこに材質や塗装の品質の高さが感じられます。
ものをたくさん所有することや、たくさん色を使うことが、センスの基準でないことは学ぶ価値がありそうですね。