●おすすめ!地方の美術館

美術館
丸亀の猪熊弦一郎美術館にて
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東京以外で私のおすすめの美術館を駆け足で書いてみます。岡山は倉敷美観地区にある大原美術館、それから犬島にある精錬所美術館。香川県はいっぱいあるよ、丸亀市の猪熊弦一郎美術館、豊島美術館、地中美術館、ベネッセミュージアムもいいです。

愛媛は県美もいいですが、実は大三島にも、ところミュージアム、伊東豊雄建築ミュージアム、岩田健母と子のミュージアムなど、景色も合わさって良い美術館がたくさんあります。北陸は言わずと知れた金沢の21世紀美術館、それから図書館も素晴らしい富山市のガラス美術館。建物や場所がいわさきちひろの世界そのもののような、長野県安曇野市の安曇野ちひろ美術館。北海道は基本設計をイサム・ノグチが担当しているモエレ沼公園が良かったなあ。神奈川はポーラ美術館、箱根彫刻の森美術館など。

九州は、大濠公園の中にある福岡市美術館はよく行きます。

ということで、今ぱっと思い出すだけでもこんなにあるんだねえ。

読書
※写真はイメージです

宿でゆっくりする旅もいいですが、あえて各駅停車の電車に乗って、読書にあけくれるのもいい。美術館で今日見た作家の関連書籍を買って、読みながら家へ帰る。各駅停車だから、ふいに15分も知らない駅で停車したりして、こういうとき旅をしているなと感じる。何にも追われていない、誰とも会話せず、スマホも見ずに本を読んだりぼーっとしたり。とても贅沢な時間だ。

●アートに触れて、日常と違う世界を味わいつくす

愛媛に帰ったら、農作業が待っている。ずっと無心に体を動かす。アートを見るのとは対局の世界にも思える。でも、畑の休憩の時間、木陰に入って美術館で買った本を読んでみると、とても合うことに驚いた。作物を育てるっていうリアルな世界の中にいると、芸術とか文学を遠く感じることがあって、愛媛だと本が全然読めなかった。きっと目の前のことで精一杯だったんだと思う。けれど、美術館へ行ってから向かう畑は少し景色が違っている。目の前の、この小さな生命に宿る宇宙の大きさを想像するし、広い年月での巡りを意識するようにもなった。

もちろん、それは秋になったからでもある。心にも余裕ができているからだ。

すすめられて美術館へ行くものでもないけれど、気持ちいい季節なので、ぜひ庭園を散歩しながら、美術館の扉を開いてみてはどうだろう。きっと、日常から引き剥がされて、子どもの心で明日からの世界を見ることができると思う。

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