画廊と美術館での学芸員経験を持ち、現在は美術エッセイストとして活躍中の小笠原洋子さんは、高齢者向けの3DK団地でひとり暮らしをしています。お金を極力使わない「ケチカロジー」という言葉を生み出し著書も上梓している小笠原さんが実践する、1日1000円生活について詳しく教えてもらいました。

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小笠原洋子さん
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73歳おひとりさまの「チープシック」なお金の使い方

「チープシック」とは、自分好みの安価にして品のよい洋服のことを意味する言葉ですが、生活全般の理想でもあります。今回はチープシックなお金の使い方についてお話しましょう。

●1日1000円生活を無理なく継続中

73歳で年金暮らしのおひとりさまは、たしかに"わび住まい"で、体力もありません。ただ、老いても元気だけが唯一の価値ではなく、ポジティブで美的な"枯れ"があってもいいものと思っています。シワやシミをチャームポイントと思えれば、なおいいですよね。

その1つはお金づかいであり、名づけて「ケチカロジー」です。私は1日1000円生活を数十年間続けてきました。

お金

 

お財布の中には、1000円札で10日分の10000円と予備金を区分して入れておき、買い物にはお札1枚だけ使うという仕組みです。ただ、予備金が入っていることは忘れているくらい、ほぼ使うことはありません。

これが「ケチカロジー」の一例ですが、絶対に1000円以上使わないというわけではありません。それでも月末に、毎日簡単にメモしておく出費額を算出すると、1日平均約1000円になるので嘘でもないのです。例えば2000円使ってしまった日の翌日は、買い物に行かないというようなやりくりをすることもケチカロジーの1つです。

●いざというときの大きな出費にも備える

またときには予期せぬ修繕費や、健康維持のための電化製品や医療費などに、大出費をしてしまうこともあります。そのときは日常通いの銀行以外の、別枠に置いてある預金から捻出します。つまり銀行を2手に分け、ひとつは約10日目に引き出すいわば財布代わりに、もうひとつの銀行はほとんど手出しをしない大出費用です。

その銀行には、若い頃から趣味だったともいえる貯蓄や、特別収入を得たときなど、使わないで預けてきた、いわば「余剰金バンク」です。趣味とは言いすぎでも、現金を手取りで受けとっていた在職時代、給料袋を開封すると即、中身の3割~5割額は見なかったふりをして袋に戻し、素早く預金してしまうことを意識してきました。

現在、無職である私にとって、貯金は楽しみのひとつ。たとえば1000円さえも使わなかった日に、ポイと引き出しの奥地に入れて、忘れてしまう。それがまとまって出てきたときなどにはとてもうれしいものです。そんなときは、おしゃれしてレストランでも行き、一皿を楽しむ足しにする。そんなささやかな優雅さが、私のチープシック生活なのです。