引きこもる子ども
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「知的障害や発達障害などと診断されると例えば学校では特別支援の対象になりますが、境界知能の子どもたちは、ほとんど気づかれず、支援対象外となってしまうことも少なくありません。境界知能の子どもたちは、知的障害とは認識されないことが多々あり、一方で、勉強などで遅れを取ることも多いので、周囲からは『やる気がない』『さぼっている』という誤解を受けがちです」

勉強だけでなく、運動やコミュニケーションが苦手なケースも多いです。大人になってからは、経済面や就労面などさまざまな領域で本来は支援を必要とするのに気づかれない…というケースもよくあるそうです。

●子どもたちの生きにくさを心理検査で気づく

では、境界知能やグレーゾーンの子どもたちが抱えている生きにくさを、どうしたら見つけることができるのでしょうか。じつは、比較的簡易な心理検査から、その状態を大まかに判別することが可能なのだとか。

「たとえば、『ひし形とバツ、三角、丸の図形を書いてみて』という模写課題があるのですが、もし子どもが年齢相応にうまく図形を書けなかった場合は視覚的な認知機能に何かしらの課題があるとも考えられます。仮に視力が正常でも、視覚認知に弱さがあると、正確に形や文字を認識できないこともあります。その場合、ひらがなや漢字などの文字が覚えにくかったり、図形への理解が苦手だったりするため、勉強にも支障が出ることがあります」

漫画2
『普通にできない子を医療で助ける境界線とグレーゾーンの子どもたち5』

大切なのは、何かおかしいなと思ったらその違和感をそのままにしないこと。

「発達に課題がある子や虐待を受け心に傷を負った子、不登校の子、自傷を繰り返す子、摂食障害のある子の中にも、境界知能やグレーゾーンの子どもたちが隠れているかもしれません。各種の心理検査を通じて、その子の発達段階がどうなのかを教員や親が知り、『どんな部分で子どもがつまずいているのか』『どうしたらその状態をサポートできるのか』をきちんと把握することが大切です」

●気づかれないままだと不適切な行動につながる可能性も

その問題を本人や周囲も認識しないままだと、『何をやってもうまくいかない』と自己効力感も下がってしまいます。境界知能やグレーゾーンであることが周囲に気づかれなかったゆえ、不適切な行動につながってしまったケースも見てきました。

「極端な例ですが、たとえば周囲の人がみんなノーベル賞受賞者という環境に自分が置かれたら、みなさん劣等感に苛まれるのではないでしょうか。それと同じように、健常者の中でなんの配慮もない環境に置かれたら、境界知能やグレーゾーンの人々も劣等感が高まるかもしれません。そんななか、悪友と一緒に行動することで安心感や自己効力感が得られるとすると、最悪の場合、非行や問題行動に走ってしまうこともあります」

子どもをなだめる親

大切なのは、保護者や学校の教員らが彼らの生きにくさに気づき、たとえば教育や医療などの相談機関とつながったりして、背景を理解される機会を得ること。具体的な支援や治療を受けることで、環境は大きく変わる可能性もあります。

もし自分の子どもはもちろん、身近な誰かに違和感を抱いた場合、本人のやる気や性格だと片づけるのは早計かもしれません。彼らの生きにくさを軽減してあげるため、一度専門機関に相談することを考えてみてはいかがでしょうか。

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普通にできない子を医療で助ける 境界知能とグレーゾーンの子どもたち5

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