身の丈にあったコンパクトな家、暮らしを小さくするために狭い家を、あえて選択する人が増えています。コンパクトな家にはコスト面、暮らしやすさなど、さまざまなメリットが。ただしその分、新築や改修の計画段階で考えるべきこと、注意すべきことも多くなってきます。この記事では、コンパクトで快適な家を実現するための工夫について、一級建築士の新井崇文さんが解説。自身の設計した事例を交えて、設計の工夫などを紹介します。

コンパクトなキッチンダイニング
コンパクトな住まいでも、広がりがあって、暮らしやすい間取りにしたいもの
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「兼用」の間取りで、狭い空間をいろいろな用途に使う

コンパクトなLDK

新居での暮らしぶりをイメージしながら間取りを考えていくと、次第に部屋数が増えていってしまうことがあります。

「将来、離れて暮らす親が高齢になったら同居できるように」「遠くから来た親族や友人が泊まれるように」…。こんな感じで、サブルームやゲストルームが欲しくなることもあるでしょう。しかし、コンパクトな家を実現するには、普段使わない余剰スペースをなくすことが肝要です。

遠くから親族や友人が遊びに来るケースは、年に数回。そんな「たまに」の頻度であれば、ホテル代を渡して泊まってもらうという代替手段をとった方が、費用的にはお得になることも。

たとえば6畳(3坪)の部屋をつくるために床面積を増やす場合、建設費としてはざっと3坪×120万円/坪=360万円程度増えます。「たまに」の頻度であれば、ホテル代の方が、今後20〜30年間のトータルコストと比較して安いという見方もできるわけです。

 

小さなリビング

「将来、親が高齢になったら来てもらって同居できるように」と配慮するのであれば、「兼用」の発想で間取りを考えることも効果的。

このお宅では、LDKのスペースの中で、リビング部分の天井に一定間隔でフックをつけておき、簡易的なスクリーンを設置できるようにしておきました。

 

天井のフック

このフックにスクリーンを設置して、空間をやわらかく仕切ることで、将来、リビングを親の居住スペースにあてることができます。コストもかからず、とてもシンプルな工夫です。

 

ソファベッド

ちなみにソファは、手早くベッドにチェンジできる製品をチョイス。リビングを、ゲストが宿泊するスペースにも使えます。こうしたスペースを「兼用」する発想で間取りを考えていけば、スペースをコンパクトに抑えることができます。

 

持ち物を見直してスリム化する

整理中の持ち物

持ち物が多くて…という方は、家づくりの機会に、ぜひ持ち物全体の見直しを。

持ち物にはおおよそ、「普段使うもの」と「保存品」があります。まず「普段使うもの」を見直してみましょう。意外とそれらが、使いにくい場所に置いてあって、不便なことがあるものです。新居ではそうしたものを、よく使う場所の近くに配置できるように収納計画を考えましょう。住みやすい間取りの家が実現できます。

一方「保存品」を見直してみると「もう1年以上使っていない」「実際なくても困らない」というものも。そうしたものは、家づくりを機会に処分を検討します。そうして持ち物をスリムにしていくことで、コンパクトな家が実現できます。

持ち物を見直すこと自体にコストはかかりません。また、非常にシンプルな行為と言えるでしょう。