寒さ厳しい東北の都市にある建築家の自邸を訪ねました。太陽光パネルが載る大きな屋根と焼杉で仕上げられた個性的な外観。中庭の様子は雑木林のようなたたずまいです。ここは30代の夫婦と子ども2人の4人家族が、バーベキューやキャンプを楽しむ場所にも。エコな建材を使いながら、人にも環境にもやさしいエコハウスです。
すべての画像を見る(全29枚)都市部で暮らしながら、中庭で自然を感じる家に
渡辺さんの家 宮城県 家族構成/夫30代 妻30代 長男6歳 二男2歳
設計/建築工房DADA
「初めは自然豊かな場所に家を建てたいと考えていましたが、仕事や教育を考えるとほどほどの都市部でないと難しい。ならば家の中に自然を取り込んでしまおうと考えたんです」(渡辺さん)
大きな屋根と焼杉で仕上げられた個性的な外観。屋根の開口部から樹木の先端が突き出ているのは、その下に雑木林のような中庭が広がっているから。大きな窓でつながっているので、室内でも雑木林の中にいるような気分です。
エコな住まいにするためにこだわった7つのポイント
高い断熱性に加え、創エネも組み合わせたハイブリッドなエコハウス。もしもの災害時にもエネルギーを自給できるという安心も手に入れました。
1.大屋根を生かした太陽光発電
太陽光発電の発電量は4kWh。昼間の電気使用量は十分にまかなえますが、夜には買電しているそうです。使いきれなかった分は売電しています。
写真の奥には薪小屋があり、その奥に雨水タンクも設置しています。
2.暖かくてコスパのいい薪ストーブ
趣味室に置かれているのはデンマーク・HWAM(ワム)社の薪ストーブ。
煙突は寝室を通しているので2階にも熱が伝わります。床には石英岩を敷いて蓄熱。薪は仕事の関係者から買っているので、昨年は2万円程度ですみました。
3.家じゅうに冷気暖気を届ける床下エアコン
基礎部分にダクトを回し、8kWhの業務用エアコンを設置。暖気を家のすみずみまで届けるシステムです。
冷たい空気は中間ダクトで小屋裏まで引き上げ排出し、暖気は床に設けられたスリットから室内に放出されます。
4.上下階の温度差を減らす工夫
家じゅうに暖気を届けるため室内の仕切りは最小限に。自然と通気できるので上下階の温度差は1℃程度だそう。
タオルも乾く脱衣室の床の吹き出し口(スリットの部分)。
1階リビングの壁の下部にも吹き出し口が。
天井に設けた熱交換型の換気扇。
5.内装・外装は環境にやさしい木材で仕上げる
外壁は焼杉板張り、床・壁・天井は北海道産のカラ松パネル材や青森ヒバなどの木材で仕上げました。「妻の父親が大工なので今回の施工をお願いしました。やっぱり手仕事の風合いって温かみを感じるんですよね」と渡辺さん。
6.木材の端材を使った断熱材
断熱材に使ったのはウッドファイバー。間伐材や木の端材を利用したエコ素材です。
木材チップを圧縮しているので、断熱性はもちろん蓄熱性、調湿性、吸音性もある優れもの。一般的な断熱材よりも施工費は若干高くなるそうです。
7.断熱性に優れたトリプルガラス
大きな窓には断熱性に優れたトリプルガラスの木製建具を入れました。
スウェーデンの木製サッシメーカーと技術提携した北海道のノルド社製。引き戸は重くて子どもや高齢者は扱いにくいことから、開きのドアにしています。