根強い人気の平屋。すべての部屋をワンフロアに配置すると、工事費は2階建てや3階建てよりも割高になることが一般的です。それだけでなく、敷地もそれなりの広さが必要に。しかし、一級建築士の石川淳さんは、「間取りを工夫して、平屋感覚で暮らせる2階建ての家にすれば、比較的小さな敷地で、割安に建てられる」と言います。平屋感覚の家とは? 自身が設計した家の竣工写真を交えながら、詳しく解説してくれました。

平屋感覚の家
1階で生活を完結でき、あまり利用しない部屋を屋根裏部屋のような2階に上げた「平屋感覚の家」
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外観は平屋っぽい2階建てにすれば工事費は抑えられる

中庭側から見た平屋感覚の家

【この家のプロフィール】
・所在地:静岡県
・家族構成:夫婦+子ども2人
・間取り:1階にLDKと小和室と主寝室、サニタリー 2階に子ども部屋と書斎
・延床面積:33.8坪

こちらの家は、外観のデザインは三角屋根の平屋。L字型の建物の中央部分に塀で囲まれた中庭を設けました。

 

平屋感覚の家のプラン
上が1階平面図。下が2階の平面図

こちらがそのプラン。「平屋なのに2階があるの?」と思われたと思います。

じつは、子ども部屋と書斎を2階に小屋裏部屋風にプランしました。法令的には2階建てにしつつ、外観は平屋っぽいデザインにすることで、工事費を圧縮しているのです。また、2階部分は屋根に囲まれたことで外壁がなく、これも予算圧縮に役立っています。

2階の子ども部屋は、将来お子さんが巣立ったあとは、その役目は終えることに。夫婦ふたり暮らしになったら平屋として使うことも可能です。

 

平屋感覚の家=平屋の間取り+屋根裏風の個室

1階のリビング

間取りを見ていきましょう。ここは中庭に開いた1階のリビングです。左に小和室があり、階段を上がると子ども部屋へ。

 

玄関土間

玄関土間には、ウオークインシューズクロークを設置。写真奥右手に玄関があります。たとえ子どもたちの靴が脱ぎ散らかっていたとしても、手前にあるリビングとの間の戸をサッと閉めればすっきり。

また、玄関土間はドアをあけたときに室内が丸見えにならないように、L字型の平面にしてあります。

 

小和室には玄関土間から直接入れる

小和室には玄関土間から直接入れる開口もあり、ちょっとした来客を直接この部屋に導くこともできます。

 

キッチン

この家のキッチンはクローズタイプです。大きな引き戸でリビングから見えなくすることも可能。勝手口からは外の物干しへ直行できます。これも平屋感覚の家の魅力です。

 

主寝室

主寝室は1階の中庭に面しています。朝、サッシをあければ、すぐに庭へ出ることもできます。1階なのに屋根の勾配を表しにして、天井高を高く取れているのも平屋感覚!

 

2階の子ども部屋

こちらが2階の子ども部屋です。屋根裏部屋のような雰囲気になり、子どもたちに大人気です。ちなみに、写真右手の斜めの窓は、屋根用の製品を使用し開閉が可能です。

 

リビングとつながる内窓

子ども部屋には1階のリビングとつながる内窓を設けました。

 

2階の書斎

こちらは2階の書斎です。窓を設けてあるので、屋根裏部屋とは思えない明るさ。勾配天井は適度な「おこもり感」があり、とても落ち着く空間です。

当初の設計では1階に設ける予定でしたが、収納量を増やしたいとの希望があったことから、2階に。その分1階のウオークインクローゼットを拡大しました。