作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセイ。冬といえばみかん。みかん農家でもある久美子さんにみかんのおいしい食べ方について教えてもらいました。

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第88回「みかんの新しい食べ方」

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あけましておめでとうございます。今年も、暮らし周辺のことをゆるゆると綴っていこうと思いますので、よろしくお願いします。

さて、冬といえばこたつとみかん。私の愛媛の実家は小さいながらみかん農園をしているので、昔から冬はどこへいくにも鞄にみかんを忍ばせた。

みかん畑

愛媛のシニア世代のみなさんなら頷いてくれそうだが、水筒の代わりにみかんという冗談のような本当の話だ。急いで出かけなくてはならず、お茶を水筒に入れる時間がないときは手っ取り早く、こたつの上のみかんを5~6個ビニール袋に入れて鞄にin。そして、喉がかわいたらみかんを食べる。いや、飲むのだ。みかんは飲み物。蛇口をひねるとポンジュースが出てくるという都市伝説も、こういう日常あるあるから来ているのかもしれんなあ。

●みかんが余ったら「焼きみかん」が一番

とはいえ、温州みかんの季節もそろそろ終わり。家にみかんが余っていて、腐ってきているなんてことはないだろうか。そんなときは、思い切って焼きみかんがオススメ。

焼きみかん
外でみかんを焼いたことも

オーブンに、みかんをごろごろと並べて、そのまま焼くだけだ。じゅわじゅわと汁が出てきて、そのうち焦げ目がつきはじめるけれど、気にせずにガンガンと焼き続ける。そのうちに皮が本格的に焦げてきて香ばしい匂いがしてくる。さあ、このへんでオーブンから出しましょう。

焼きみかん
※画像はイメージです

まるで焼き芋のような香り。アチッ! と言いながら手でむいてもいいし、こうなると通常のみかんとは別の食べ物になっているので、ナイフとフォークで皮を開いて、熱々のうちにさあ、お食べ。みかんの甘みがさらに凝縮されて、焼き芋の蜜のような味わいになっている。寒い冬に冷たいみかんを食べる気がしないなという方にも是非この焼きみかんを試してみてほしい。

●どうしても食べきれないならジュースにして

みかん

みかんをダンボール買いしてしまって、食べ切れそうにないなあという方は、腐る前に思い切って絞ってしまうのがいいと思う。空いたペットボトルに果汁を詰めて冷凍にしてしまうのです! 暑い暑い夏、そいつを解凍し、ジュースとして飲んでごらんなさい。冬の自分のひと手間を褒めてあげたくなるほどに、本当に美味しい果汁100%オレンジジュースだ。やっぱりみかんは飲み物なのだよ。

冷凍みかんも5個くらいならしてもいいけれど、球体だからどうしてもかさばるので、まだ大量にみかんがあるという方は、手っ取り早く絞って保存するのがいいと思いますよ。

●みかんの皮は漢方薬にもなります

みかんの皮

私は、みかんの皮を干してせっせとストックしている。お風呂に入れるのもいいし、紅茶に入れて飲むと甘みと香りが増してとてもおいしい。

みかんの皮は乾燥させてしまえば「陳皮」として次の活躍の場がある。長く寝かせれば寝かせるほど効能のある漢方薬となるようだ。この陳皮を少量だけ水に戻して、細かく切り、大豆や高野豆腐と一緒に煮物にすると、柑橘の香りが鼻孔をくすぐる食欲そそる一品になる。見た目にもオレンジ色が美しい。味が華やかなので、入れすぎに注意しましょう。一鍋で、みかん半分の皮でいいだろう。縦が約2センチ、横は5ミリくらいかな、ごくごく小さく切るのもポイントだ。他の柑橘と違って灰汁抜きの必要がないのも嬉しい。これを八朔や夏みかんでやってしまうと、相当苦くなるのでご注意。あくまで、温州みかんの皮を使ってくださいね。祖母や母が冬になるとよく作ってくれた私達の地域の伝統の料理だ。また、酢飯をするときにみかんを絞って甘めの酢として使ったり(米酢も混ぜます)もしていたなあ。

名残惜しいけれど、みかんもそろそろ食べ納め。子どもの頃から当たり前に食べてきた柑橘だけれど、冬だけの味わいだと思うと季節を楽しみ尽くしたいなという気持ちになる。1月後半からは、八朔やはるかなど、次の柑橘が待っている。

 

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