女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地であり、その後も定期的に訪れるスウェーデンのこと(フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと)などを写真と文章でつづります。
第19回は、3年ぶりに訪れたスウェーデンの首都ストックホルムでの1週間滞在記・前編です。

猫とフィーカ
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質素さは豊かさ。自然とともに過ごすスウェーデンの夏<川上麻衣子の猫とフィーカ>

 

3年振りのスウェーデン渡航。航空券を取るのも大変…<川上麻衣子の猫とフィーカ>

2019年5月。夏が間近のストックホルムを訪れたときには、またすぐに戻ってこられるだろうと疑いもしなかったその場所でしたが、2020年。思いもよらなかった世界的なパンデミックのために、海外はもとより、国内でさえも旅をすることは難しい日々を、今も私たちは過ごしています。

夜の街並みと川上麻衣子さん
3年振りに訪れたスウェーデンの首都ストックホルムの街並み(到着当日)

すでに3年近くも私たちは、コロナに振り回されてきたのだと、改めて思う11月です。

本業である女優業は、常ににぎやかな環境で仕事をすることが当たり前な職業ですから舞台公演は当然ながら、イベントや映画、テレビの撮影も中止せざるを得ない状況が長く続きました。それでも今年の夏あたりからは少しずつ活動が再開され始めた感触があります。

そして50歳から始めた私のもう1つの仕事。谷中・千駄木・根津エリア。いわゆる「谷根千エリア」に構えたSWEDEN GRACEというスウェーデンの雑貨などを取り扱う店舗経営です。できる限り、現地の新鮮な空気を店舗にも取り入れたくて、2016年にオープンしてからは買いつけも含めて、母と年に数回往復する習慣もできていただけに、歯がゆい思いがあります。

同業者の方々に、それとなく海外渡航について情報を集めてみると、皆さんそれぞれに渡航ルートを工夫しながら、現地買いつけに行っていることがわかりました。そうであるならば、と私も意を決して、3年ぶりとなるストックホルムへの旅を10月に決行しました。これが、準備の段階から思いのほか大変な作業となりました。

●以前と同じルートでヨーロッパに行けない!航空券も高い…!

なにしろヨーロッパに行くためには、ロシア上空を飛ぶルートが最短です。そのロシアが戦争中であるために、今ヨーロッパは遠い国となってしまいました。それに加えて、なじみのあったスカンジナビア航空はコロナの打撃を受けてか、アジア便は現在運航していません。さらに、ジェット燃料の高騰により、航空券は通常よりかなり高値となっています。

そんな状況の中ではありましたが、インターネットを駆使しながら、なるだけ渡航時間の少ないルートと、金額的に負担の少ないチケットを探し求める努力をしてみました。

じつはこの時期に渡航を決意した理由の1つには、ストックホルムにあるアパートの部屋
を3年も訪れていない不安がありました。現地の友人たちが、定期的にメンテナンスしてくれてはいましたが、数か月前から建物自体の大がかりな外壁工事が行われ、部屋の中もかなり影響を受けていると聞いていました。

コロナが少し落ち着き、渡航の規制が緩んだこの時期を逃しては、次はいつになるかも知れず、決行となったわけです。しかし頼みのスカンジナビア航空は使えず、航空会社のチケットはどこも値が張ります。