人生100年時代、50歳は折り返し地点。やり残したことに挑戦するには遅くありません。実際、50代読者へのアンケートでも、多くの人が今やりたいことへの実現に向けて動いているようです。年齢や経験を重ねた今だからできることもたくさんあるはず。今回、60代で漫画家としての再デビューを飾った笹生那実さんにお話を伺いました。

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笹生那実さん
漫画家の笹生那実さん(67歳)
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長年離れていた漫画の世界。60歳を過ぎて再び描くこと日常に

3年前、約30年ぶりに作品を商業出版し、プロの漫画家として再スタートをきりました。
64歳のことです。今回、復帰にいちばん驚いたのは私自身。だって、30年もの長いブランクがあったからです。

18歳でデビューした漫画家を引退したのは、自分自身に限界を感じていたから。当時の少女漫画業界は、とにかくスピードと量が求められていて、遅筆な私は納得のいく作品が描けず、“もう無理、嫌だ”としか思えず諦めてしまったのです。

●改めて「描きたい」という気持ちが芽生えて…

それから、長い間まったく描く気になれずにいましたが、子どもたちが小学校低学年の頃、私が病気で入院。この経験を子どもたちに伝えたいと思い、漫画にしたのです。それは学校で配られ、皆さんに喜ばれました。伝えたいことは漫画にするとよく伝わる、と実感したできごとです。

その後、亡くなった漫画家さんの作品復刻運動が大きな転機に。同人誌即売会に参加するようになり、1970~1980年代の少女漫画の歴史などを描いて同人誌に発表するなど、再び日常に「描くこと」が加わりました。以来、描くことにとても救われてきた気がします。

薔薇はシュラバで生まれる
2020年に発売された笹生さんの再デビュー作『薔薇はシュラバで生まれる―70年代少女漫画アシスタント奮闘記―』(©笹生那実/イースト・プレス)

そんなことを20年ほど続けていたら、同人誌を読んだ編集者の方から単行本化の話をいただくチャンスが。引き受けたはいいものの、昔よりもさらに遅筆になっていて、だいぶ時間がかかってしまいました。でも、「やっぱり私は、漫画で伝えたいことがある」と改めて気づいたんです。

 

60代後半になった今は、マイペースで、たまに小さなお仕事をさせてもらっています。自分のスタイルで描けるようになった今が、いちばん自然に漫画と向き合えているのかもしれません。

 

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