ドラマや映画で幅広く活躍する東出昌大さん。三島由紀夫の代表シリーズ『豊饒の海』の舞台化に当たって、見どころや意気込み、父親としてのプライベートなお話についても聞かせてもらいました。

東出昌大さん
舞台『豊饒の海』に主演する東出昌大さん
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10代から惹かれ続けた文学作品の舞台化。心も体も研ぎ澄まして“美しく”演じたいです

テレビドラマ、映画と幅広いフィールドで活躍中の東出さんが、文芸作品の舞台に挑戦。三島由紀夫の小説が原作の『豊饒の海』で、作品の象徴といえる青年・松枝清顕を演じます。

●初めて読んだときは、難しすぎて茫然自失状態に

『豊饒の海』は長編4作にわたる大河小説で、清顕と彼の親友の本多の関係を軸に、数十年のときを追いながら、輪廻転生や三島独特の美学がつまった作品です。読書家で知られる東出さんですが、初めてこの作品に触れたのは、なんと高校生の頃だったとか。

「教科書に載っていた文学作品に片っ端から挑戦していた時期があったんです。すっと文章になじめたのが三島由紀夫の小説でした。何冊か読んで長編があるのかと手に取ったのが『豊饒の海』でしたが、難しすぎて茫然自失状態に(笑)。23~24歳で再読してあらすじをつかみ、30歳の今、すばらしい脚本と原作の再々読で、ようやく人物像がイメージできた気がしています」

大正時代の日本から始まるこの物語。東出さん演じる清顕は、侯爵家の後継ぎ息子として、なに不自由ない環境で育ちます。

「温室育ちゆえに人と違うことに興味をもち、自身の美意識にも自負が強い男です。同時に空虚さも抱えている。心優しかったり、大きな志をもつ人物を演じるときって憧れというか、まだ未熟な自分と役との間に距離を感じますが、清顕はいいのか悪いのか、東出という男の一部に近しいものがあるかもしれません(笑)。満たされた社会で生きる僕には親近感が湧きます」

●公演中は佇まいも立ち姿もきれいでありたい

さらにはこんな役づくりも。

「体と心をより研ぎ澄ますよう、朝はランニングとストレッチに声出し。けいこを終えてからはジムに通っています。僕が清顕とそう変わらない20歳ぐらいの頃は、こんなストイックな生活とは無縁で…。今でも個人的には『人はそこまで美を追い求めなくてもいい』気もするんですけれどね(笑)。ただ清顕は美しい男。公演中は佇まいも立ち姿も、きれいでありたいなと」

幻想的な青年役について語ってくれた、愛のこもったまなざし。プライベートでは父親としての顔ももっています。

「親子ものの動物ドキュメンタリーを観れば感じるところがあるし、ニュースを聞けば、未来に思いをはせるように。ひとり身だった青年時代よりも感情の幅が深くなったと感じるのは、それだけ家族との絆が強くなっているからだと思いますね」

役者としても人としても、ひとつひとつの経験を丁寧に積み上げている東出さん。厚みを増していく演技に注目です。

『豊饒の海』

「春の雪」、「奔馬」、「暁の寺」、「天人五衰」の4作の長編小説として発表された、三島由紀夫の『豊饒の海』、初の舞台化。注目の作家・長田育恵氏が脚本を手がける。イギリス人のマックス・ウェブスター氏の演出も話題に。
(11月3日~12月2日、東京都・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA、12月8日~9日、大阪府・森ノ宮ピロティホールにて公演)

【東出昌大さん】

1988年、埼玉県生まれ。モデルを経て2012年に映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。映画『菊とギロチン』、『寝ても覚めても』やドラマなど幅広く活躍する。映画『ビブリア古書堂の事件手帖』が公開中