子どもたちが独立し、通勤や子育てに便利だった都市部から、自然豊かな土地へ。シニア世代の夫妻が暮らす平屋の事例です。自作したコンロでバーベキューを楽しむ「使う庭」、草花に癒やしを求めてダイニングから「眺める庭」…。さまざまな庭の表情を楽しむことができます。裏山の景色とも調和した、豊かな時間を過ごせる終の住処を紹介。
すべての画像を見る(全26枚)ずれながらつながる、趣の異なる2つの庭
Uさんの家 神奈川県 家族構成/夫61歳 妻58歳
設計/オノ・デザイン建築設計事務所
木々の葉が青々と茂る裏山を背景にたたずむUさんの家。明るさを抑えた平屋の室内は趣があり、ダイニングには1枚ガラスのフィックス窓が。緑豊かな雑木の庭が身近に感じられます。
「日中のほとんどの時間を過ごすダイニングが、この家の中心。あえて掃き出し窓にせず、収納を兼ねたベンチで足元を隠したことで、心おきなくくつろげます。深い庇(ひさし)がつくる、ほどよい明るさも心地いい」と妻。ダイニング北側のキッチンからの庭の眺めも絶品です。
奥に続くリビングは、一直線ではなくダイニングからあえてずらして配しているので奥行きが感じられます。ソファに座ると勾配天井に包まれるような空間。
庭側には掃き出し窓が設けられ、デッキを介して庭とつながっています。庭のレンガコンロは夫婦で製作。子どもたちが家族を連れて遊びに来たときにバーベキューを楽しむほか、燻製にチャレンジしたり焚き火をしながらお酒を飲んだりと、いわば使う庭。
一方、ダイニング側はもっぱら眺める庭。「ずれ」をつくったことで、つながっているのに2つの異なる趣の空間ができました。
アウトドアを楽しむ家のこだわりポイント
室内と同様、クランクしながらつながっているため奥行きが感じられるU邸の庭。リビングやダイニングとのつながり方も楽しみ方も、それぞれ異なっています。
1.裏山の眺めを楽しめるよう平屋に
この土地を購入する決め手のひとつとなった裏山を、家の前の道路や庭から眺められるよう平屋としたU邸。外壁は、裏山や庭の緑と調和するようグレージュ色の左官塗りに。周囲の環境に自然に溶け込んでいます。
2.自然を感じさせるアプローチ&玄関
庭が家の外観と一体にデザインされたUさんの家では、敷地の高低差を生かしたアプローチも森の中の小道のような自然を感じさせるデザインに。地面には芝生の代わりにグランドカバーの「クラピア」を用いています。
3.自作のレンガコンロでバーベキューを楽しむ
リビング側の庭には、自作のレンガコンロを設置。キャンプ用の折りたたみ式のイスやテーブルを出して、バーベキューを楽しみます。たき火をしながら夜空を見上げ、お酒を楽しむこともあるそう。
4.ベンチにもなるリビングとつながるデッキ
リビングと庭をつなぎ、室内に開放感をもたらす広めのウッドデッキは、洗濯物を干すだけでなく、バーベキューなどの際にはベンチ代わりに。「折りたたみのイスと合わせると、6人くらいは大丈夫かな」と夫。
5.庭を感じながら読書を楽しむコーナー
リビングの天井は切妻屋根の形に沿って傾斜しており、窓際の壁は高さ2mくらい。「ソファに寝そべって、庭の緑を感じながら本を読むことも。適度なこもり感があって、読書に集中できます」と妻。壁には読書灯も。
6.ガーデニングができるスペースも
リビング側はアクティビティを楽しむ庭なのに対し、ダイニング側は妻がガーデニングを楽しむ庭。「夫は植物に関心がなかったけれど、今では木々が芽吹いたりつぼみがふくらんだことなどの話題が増えました」。
7.草花を眺めながらお茶をしたり、本を読んだり
家と庭の間にも憩いのスペースが。タイルやデッキを用いず、たたき土間にしつらえたのもポイント。庭の草花を眺めながらリラックスできる場となっています。
8.木製サッシや棚で窓辺を演出
ダイニングの窓は緑と調和する木製サッシで仕上げ、足元にはベンチを設置。窓辺に寄り添いたくなる演出が施されています。
「ミナ ペルホネン」のファブリックを使用したライトも温もりを感じさせます。