作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。二拠点生活をしている久美子さんの、農業での暮らしについてつづってくれました。

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愛媛と東京での二拠点生活。作家であり農家でもあり続けたい<暮らしっく>

第77回「夏の朝活!」

暮らしっく
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愛媛と東京の二拠点生活をはじめて1年。愛媛では農業に明け暮れているわけだが、夏は過酷すぎる。熱中症の危険も出てくるので昼間は家で執筆をしたり、昼寝をして過ごす。

 

●農家は早朝から本格活動

そうなると、朝どれだけ早く起きれるかの勝負になってくる。5時前に目覚ましがなり、洗濯を回し、まだ誰も起きていない家の中で朝ごはん用のおにぎりを作り水筒にポカリを入れる。母も起きてきて、一緒に農作業道具や弁当の準備する。体を動かしているとだんだん目が覚めてくる。

日の出

東の空が赤く染まって、急げや急げ! 太陽がくるで!

洗濯を干し、車に乗り込みさあ畑へ出発だ。歩いていけるところに仲間と作っている野菜畑が、少し離れたところに広大なサトウキビ畑と、みかん畑があり40本ほどの柑橘類を育てている。さらに、今年から新しく耕作放棄地だったところを開墾してポンカンや清見の苗を植えた。よって、草がジャングルを通り越して木になっているので、それを伐採するのに難儀している…。

朝5時半、みかん畑に到着。

夏の朝、ってこんなに気持ちがいいんだなあ。まだ太陽は優しくて土は朝露で湿り気があり、生まれたての地球という感じがする。大きく深呼吸をして、私は草刈り機のエンジンをかけ、木のように伸びてしまったツタを刈っていく。みるみるうちに長袖シャツは汗だくだ。

●夏の朝の気持ちよさを実感

6時半、休憩。あぜ道に座って握ってきたおにぎりを食べる。木陰は風が抜けて何と気持ちがいいことだろう。今年で執筆生活10周年なのだが、二拠点生活をする前までは夜型の生活をしてきていた。田舎育ちだが、朝がこんな清らかな表情をしていることを知らなかった。夏の朝はこんなに気持ちがいいんだなあ。すごく得した気分。大自然の中で食べる朝ごはんの美味しさといったらない。

農業

鳥がさえずり、カナカナと蝉が鳴き(朝も夕方と同じくヒグラシなんですね)、川のせせらぎ、風が木々を通り抜ける音。とてもいい時間だ。

9時、背中が燃えるように熱くなってきて、汗はシャツを絞れるほどになって顔が真っ赤になっていく。こりゃもうお手上げですわ。危険だから帰りましょう。太陽ってすごいな、この光と熱によって人間も植物も生かされているのだと実感させられる。

帰ってシャワーをあび、梅ジュースやシソジュースを飲み、お昼までの数時間を自由に過ごす。

 

●仲間たちとの時間が有意義な朝活に

おにぎり

土日は仲間たちとやっているサトウキビ畑の手入れだ。6時にみんなで集合して、一気に草刈りをし、8時に一旦帰って母とお弁当を作り畑でみんなでいただく。めちゃくちゃ有意義な朝活である。参加メンバーは若い子ばかりなのだが、みんな音を上げずに、がんばってくれている。お弁当には自分たちで作っている野菜を必ず入れることにしている。

収穫した野菜

「わあ、この味付けどうやっているんですか?」「きゅうりもこんなに大きくなっていたんですね」

畑活動に参加して以来、コンビニに行く回数が減ったという男性もいた。まてまて、野菜が育っていたからやっぱりあれを茹でて食べようと、方向指示器を消すのだ。嬉しいなあと思う。

 

日本の夏もどんどんと亜熱帯になっているというので、シエスタが必要なのではないかな。昼間はのんびり過ごして、朝にがんばる方が頭も間違いなくすっきりしていると思うなあ。ああ、一日ってこんなに長いのかと驚く。何より、夜は布団に入ったら三秒で眠れる。まあ、問題は原稿よね…。各出版社の編集さんにこの場を借りて謝ります。すみません~!