エアコンになるべく頼らない。エネルギー効率を上げる工夫

「冷暖房になるべく頼らない家にしましょう」。設計士・和田純さんのそんな提案を受けて、高い断熱性能を備えることになったわが家。住みはじめてみて、その効果には驚くばかりです。

冬の朝も室温がほとんど15℃を下回りません。最低気温が氷点下になるような朝は、もう少し下がることもありますが、寒さが本格的になるまでは、エアコンをつける必要すらない朝が続きました。

軒の様子
日差しの角度は夏と冬で変わるので、夏場は日差しが室内に差し込まないように、冬場は逆に日差しを室内に取り込めるように、ちょうどよい軒の深さを計算
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軒の深さにも工夫を凝らしています。夏は室内に陽が射し込まず、冬は室内に陽が差し込むように調整。真冬でも晴天の日は室内が陽だまりのようになり、日中はまったく暖房が必要ありません。

加えて、風通しのよさにも考慮を。夏は扉を開ければ心地よい風が流れ、暖気をすんなり外へ逃がすことができます。

断熱材の素材は、グラスウールなどと同等の断熱効果が期待できる「羊毛」を予定していました。しかし、残念ながら予算面でかなわず。代わりに、通常の断熱材(グラスウールやポリスチレンフォーム)を使用しました。

プラスチックフリーの点では心残りでしたが、羊毛もアニマルウェルフェア(動物の生活とその死に関わる環境と関連する動物の身体的・心的状態)の観点では疑問が残ります。「80〜100年」というライフスパンを思えば、やむなしと自分に言い聞かせました。

ちなみに、「もみ殻の断熱材」という魅力的なアイデアも見つかりましたが、現状ではまだDIYベースの模様。自分たちにはハードルが高すぎるように感じられました。

 

●深い軒

深い軒の様子

太陽の光をうまく生かす「パッシブソーラー」は究極のエコ。わが家は建物を南向きに建て、適切な深さの軒を出すことで、冷暖房のエネルギー消費は相当抑えられます。

 

●ペアガラス

ペアガラス

窓はどうしても熱が逃げやすい部分。「なるべくプラスチックフリーに近づける工夫」ということで、わが家は「アルミ枠ペアガラス」を採用。断熱効果もそれほど下がらないようです。

 

●シーリングファン

シーリングファン

冷暖房の効果を部屋中に行き渡らせるための必需品。これがないと、せっかく暖房で暖めた暖気が天井付近に集まってしまいます。夏は「夏モード」にすると、冷気を下にかくはん。扇風機としての役割も多少は果たしてくれます。

 

●風の通り道

風の通り道

風通しのよい家づくりの第一歩は、「風向きを知ること」。設計士の指示で、家を建てる前の土地に毎日のように足を運び、風向きを観測しました。

 

扉を開け放つ様子

実際に扉を開け放つと、西から東に一直線に風が抜けます。風の通り道は、いわば自然の扇風機兼換気扇。夏の夕方、室内にたまった熱気を一気に逃がしてくれます。

 

身の丈にあった「サスティナブル&エシカル」な家づくり

ダイニング

新居に住み始めてから1年以上が過ぎました。陽だまり暖かさ。家の中を通り抜ける風の心地よさ。身近な自然の力を借りて、できる範囲で環境に負担をかけない。そんな住まいに家族はとても満足しています。

家は人生最大の買いもの。できる限り「サスティナブルかつエシカル」な家づくりをしたいところですが、これまでエコハウスや建築に明るかったわけでもないわれわれ夫婦が、一体どんな家がつくれるのか…。

そんな思いを抱えながら、わが家なりの全力で挑んだ家づくり。はてしない可能性のある家づくりのほんの一例に過ぎませんが、相当なエネルギーをつぎ込んだことは確かです。この試行錯誤の山が、みなさんの家づくりのインスピレーションとなれば、これほどうれしいことはありません。

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